9/09/2024

台風クラブ

 とある地方都市で進学を控えた中学生たちのある夏の物語。夜のプールでこっそり、だけどなんの屈託もなく踊りまくる女子。こっそりタバコを回しのむ男子。親との関係で何かしらの問題を抱えている子。クラスの女子に一方的に思いを募らせる男子。素直なようで複雑な心を抱えたひと筋縄ではいかない中学生たちが、ある夏の土曜日の午後、台風がやってくるなか帰りそびれて校舎に取り残され、また授業をサボって東京へ家出した女子は帰る手段を失い、各々の場所で一夜を過ごす。

 それぞれが危うい中学生たち。まだ子供なのに子供の範疇をちょっと抜け出たい、かといって大人のたまごですらない宙ぶらりんな時期、台風みたいな特別な状況下で学友だけで過ごすのは、災害の危険をシリアスに考えなければ、今だってちょっと日常から離れた特別感があるだろう。怖いけど半分ワクワクするような感じはよくわかる。思いがけない一夜に人生感変わることもあるかもしれない。

 ただ、学校に誰かと二人きりで取り残されて、一方的に執拗に追われて攻撃されるような状況になるのはしゃれにならんと思うのだが。百歩譲って相手の若さゆえのあさっての方向に歪んだ行為だったと理解できたとしても、あんな目に遭った直後に和解して合流できた集団と一緒に、相手と一晩行動をともにするような優しさは持てるだろうか? まして先立って薬品背中にかけられた相手だよ? このぐらいの年頃って許すと思い込めることこそがが大人と考えるとでも思っての演出なんだろうか? 意図は正直わからなかったけど、今の感性で見ても昔の感性で見ても恐怖のトラウマ度は普遍的に変わらないんじゃないかと思ってみていた。

 アバンギャルドでとんがった作品とは思うけど、一見大人びた振る舞いをしてみえても、ぎりぎり素直な工藤夕貴にどこかほっとさせられる

監督:相米慎二 1985年製作
出演:工藤夕貴、大西結花、三浦友和、三上祐一、鶴見辰吾、尾美としのり
2024.9.8 @オガールプラザ大ホールにて鑑賞

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