8/17/2024

フェラーリ

 フェラーリの創設者エンツォ・フェラーリの人生における、公私に問題を抱え起死回生をかけて挑んだ運命のミッレミリア公道レースに参戦した1957年にスポットを当てたドラマ。エンツォ一家の愛憎劇と同時にフェラーリのドライバーになりたくて彼のもとにやってきたドライバー、デ・ポルターゴの悲劇的なレース事故という事実をもとに描かれる。

 マイケル・マンの作品は人物描写がどの作品も見応えがあるけれど、本作もしかり。熾烈なエンジン開発競争が繰り広げられていたなかのテスト走行で、幾人ものドライバーが事故に見舞われても割り切っていた風の剛腕エンツォが前年に病死した跡継ぎたる愛息の墓前でハラハラと涙を流す。冷めきった夫婦関係の上に愛人に息子を産ませていたことを偶然から知ることになり、その逆鱗にふれることを誰もが恐れていた妻ラウラが最後に見せる条件付きの「助け舟」のシーンには唸った。というか始終不機嫌そうで激しいラウラを演じたペネロペ・クルスはここまでダークなイメージもあまり観たことがない気がするのだけれど、圧倒的にうまい。
 エンツォのストーリーに絡めて語られるデ・ポルターゴは有名な「Kiss of Death」の写真は見たことがあったけれど、このような背景があったとは全く知らず事故シーンもショッキング。恋人への手紙以外にももう少し彼自身を描いたエピソードがあってもよかったようにも思ったが配分的にはこれがギリギリか。突然の事故に巻き込まれてしまった沿道の人々の、その直前まであった普通の団らん生活が断ち切られるさまも辛い。

 「ハウス・オブ・グッチ」に続いてまたも実在のイタリア男役のアダム・ドライバーは良くも悪くもそつない感じではあったけど、この作品に関してはとにかくペネロペの巧さが際立った。
 レースシーンは市街地レースは迫力十分だったけれど、強いていうならもっとたくさんみたかったかな。

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原題:Ferrari 監督:マイケル・マン 2023年製作
出演:アダム・ドライバー、ペネロペ・クルス、シャイリーン・ウッドリー、ガブリエル・レオーネ
2024.8.7鑑賞 @TOHOシネマズシャンテ


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