7/16/2024

潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断

 第二次世界大戦の開戦初期、英国軍への物資供給を断つべく地中海より大西洋へと向かったイタリア海軍の潜水艦コマンダンテ・カッペリーニ号は、中立国ベルギー国籍の貨物船を撃沈する。中立国ではあっても敵の物資を運んでいた可能性もあった貨物船ゆえの攻撃ではあったが、沈没船から救命ボートに逃れたベルギー人の乗組員たちを艦長サルヴァトーレは救助し、最寄りの港へと送り届ける決断を下す。狭い潜水艦の艦内に双方の乗組員は入り切らず甲板へ待機させたために潜水することも叶わない状況で、英国海軍が待ち構える海域を航行することになるのだが…という実話に基づいた物語。

 潜水艦の母国出港前にサルヴァトーレはすべての乗員に対して、決して生きて帰れるものとは限らないと思えと訓示を垂れる。攻撃を受けるまでもなく何かしらのトラブルが起これば全員の命が危険にさらされる潜水艦での任務。そんな厳しい状況下が続く中、機雷で被害を被った艦を救うためひとり深海へと向かう潜水夫の自己犠牲や、見放せば命を落とすことが明白な相手に救いの手を差し伸べる艦長の行いに騎士道的な精神を思うが、それは最終的に状況を理解する敵国海軍もまた同様だ。
 ファシストの国からやってきて自分たちを攻撃した言葉も習慣も違う相手に対して最初は警戒するベルギー人たちだったけれど、艦長の海の男らしい行動にやがて信頼を寄せ、尊敬の念を抱くようになるのも自然なことだろう。

 イタリア映画でここまで大掛かりな戦争アクションもなかなか珍しいように思い鑑賞。密室空間の潜水艦を舞台にした作品は手に汗握るスリリングなものが多いけど、こちらはそれに加えて詩的なモノローグ展開も印象的だった。過去の負傷に悩まされながら身重の妻を想いつつ任務遂行に向かう艦長を演じたピエルフランチェスコは貫禄たっぷり。正しくディグニティを体現するような艦長ぶりだった。
 なお実際のコマンダンテ・カッペリーニ号はその後ドイツ海軍の指揮下に入ったのち、日本の帝国海軍に接収されたという数奇な運命をたどった潜水艦だったとのこと。

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原題:Comandante 監督:エドアルド・デ・アンジェリス 2023年製作
出演:ピエルフランチェスコ・ファビーノ、カルロッタ・ガンバ、マッシミリアーノ・ロッシ
2024.7.6鑑賞 @TOHOシネマズ日本橋
イタリア映画祭2024 上映作品


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