7/22/2024

ワン・プラス・ワン


 Let It Beに続いて長らく録画したまま放置していた「ワン・プラス・ワン」を観た。言わずとしれたゴダールがローリング・ストーンズの「ベガーズ・バンケット」レコーディングにおける「悪魔を憐れむ歌」のセッション模様を収めた作品。原型はテンポも少しスローで雰囲気もちょっと違った同曲が、回数を重ねるごとにリズムが際立っていき歌詞の内容とあいまって呪術的にすら感じられていく。

 そんなレコーディング風景と並行して挿入される68年の混沌とした社会情勢を描くショートフィルム。フランスではこのころマオイズムがブームになっていてなにより1968年には五月革命もありゴダールもカンヌ映画祭粉砕など活発に活動していたなど、世界的な革命の季節だった不穏さのようなものは感じられる。ブラックパンサーや、アンヌ・ヴィアゼムスキー扮する「イヴ・デモクラシー」に、ナチスに傾倒するポルノマガジン店の描写は正直難解でついていくのは少々難しいのだけれど、クレーンに運ばれ空高く舞い上がる「イヴ」の姿は圧巻。

 どうしてゴダールとストーンズが結びついたのかといえば、カンヌ騒動後イギリスに滞在していたゴダールが「ビートルズかストーンズを撮りたい」とオファーしたところOKしたのがストーンズだったということらしい。断ったというビートルズは68年頃だとアップル・レコードができたばかりだったりインドから帰ってきて「ホワイトアルバム」を作っていた頃だから構ってられないと思ったのだろうか?? 結果として禍々しさを感じさせるこちらで正解な気はするけれど、ゴダールの撮るビートルズも観てみたかったかも。

 パンするカメラに映し出されるストーンズのメンバーのファッションから自然体な様子、セッション模様も興味深いけれど、やっぱり目で探してしまうのはブライアン・ジョーンズの姿。劇映画にもなっているとはいえそのへんの顛末はあまり詳しく知らないのだが、明らかにバンド内での存在感がすでにあまりに薄いし、メンバー揃ってセッション中でも一緒にいないシーンもけっこうあったような…。ベニヤ板で囲われた彼のスペースにハブられてる?とか思ったけど、フーッフー♪のコーラス入れでキース&奥さんや自分のガールフレンドと一緒に輪になって合いの手入れてるのが確認できてそれはちょっと安心したのだが。でもこのあとにバンドを辞めて1年も立たないうちに世を去ってしまうのだから複雑な気持ちになってしまった。


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原題:One Plus One  監督:ジャン=リュック・ゴダール 1968年製作
出演:ザ・ローリング・ストーンズ、アンヌ・ヴィアゼムスキー、フランキー・ダイモン、イェーン・クォーリア


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