3/25/2024

愛と哀しみのボレロ


 1930年代の第二次世界大戦前夜から戦後を経た80年代まで、欧米4カ国で時代の波に翻弄されつつ音楽やバレエという芸術活動に携わってきた4家族の物語。

 時代はいつも繰り返す。1度目のあと素知らぬ顔をして2度目がやってくる。反復されるボレロのメロディのように。大まかに2,3のパターンしかない人生が時代をおって繰り返されるとき、2度目以降にやってくるそれは より残酷だとナレーションで語られるけれど、そのとおりかもしれないとまさに思う。ここでそれぞれの家族の運命として描かれつつも特に欧州大陸は苦い大戦の時代を2度もくぐり抜けてきたのに、それでも実際こうして世の争いごとや対立は未だになくならないという無情。直接でなくとも何らかの形で戦火の当事者であったり、地続きになった大地のどこかで泣いている子どもたちは確実に存在している。人は何を学んできたんだろう。

 ボレロは芸術への、と同時に生きていくことへの讃歌。いつかどんな形でも4組の家族が偶然にも1つの場に集ってボレロをそれぞれの形で奏でたり聞き入るように、融和の日々が訪れてほしい。なんてことを、こんな今の時代だからこそより一層思う。苦難の歴史をくぐり抜けたかの人々には同じ轍を踏まない意識を他者へも示してほしい。そしてエッフェル塔に浮かび上がるレッドクロスが再び尊重される日が来ますように。

 実はきちんと通しで見たのは初めて。昔、名画座だった頃の銀座文化(現:シネスイッチ銀座)でよく上映されていたイメージだけど長尺に怯んで観ずに来て、テレビ放映も録画してあったけれど、いつも最初と最後のボレロ部分だけ観て終わっていた。だからポスターに使われてるジョルジュ・ドンの跳躍シーンも今回が初見。ベートーヴェンの交響曲第7番…「のだめ」だわとか思ったアテクシであるが、瞬きするのも惜しいほどスクリーンに釘付け。鮮やかな亡命シーンまでいれてもう素晴らしすぎる。やっぱり今回大きい画面で初見できてよかったーと思わず今回2度も観に行ってしまった。物語自体もそれぞれの家族のエピソードに、セリフで直接語らせなくとも浮かび上がる登場人物たちの心の動きに引き込まれて長さも感じなかった。もっと早く観ておけばよかった。反省。

 繰り返すことを地で行くように戦争を体験した親世代とその子女をそれぞれ同じ役者が演じているのが、わかり易すぎるきらいもないわけではないけれど効果的ではあったと思う。またリシャール・ボーランジェやジャック・ヴィルレの姿におお!と思い(ディーバと同じ年の製作年なんですね)、クレジットされていないらしいけれどシャロン・ストーンを見つけるなど。

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原題:Les Uns et les Autres(英題:The Ones and the Others/Boléro
監督:クロード・ルルーシュ 1981年製作
出演:ジョルジュ・ドン、ダニエル・オルブリフスキ、
ニコール・ガルシア、ロベール・オッセン、ジェラルディン・チャップリン、ジェームズ・カーン

@盛岡中央劇場、TOHOシネマズ新宿 午前十時の映画祭にて

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