天使の影

　ファスビンダーの戯曲『ゴミ、都市そして死（塵・都会・死）』のダニエル・シュミットによる映画化作品。カメラはレナート・ベルタ。
　何度か特集上映では上映されてきた本作は今回初めてのロードショー上映。ファスビンダーの戯曲の脚本は発表当時ユダヤ人投資家の描き方が大きく非難を浴びたとのこと。元の戯曲を読んでいないのでそれよりは本作の子猫のほうが…と思わないでもないけれど。映画は弱者への抑圧の方向のようなものを感じないでもなかった。恋人であるヒモから娼婦、娼婦から子猫。ヒモですら同性愛者として振る舞い始めたら酒場の男たちからリンチに遭う。そして街の開発を進めるユダヤ人投資家の娼婦や手下の男への仕打ち。多くの比喩が隠された作品なのかもしれない。

原題：Schatten der Engel　監督：ダニエル・シュミット　1978年製作
出演：イングリット・カーフェン、クラウス・レーヴィチュ、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、イルム・ヘルマン
＠Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下　2023.08.15　鑑賞