7/18/2023

ジャンヌ・ディエルマンをめぐって

 近年再評価も著しいシャンタル・アケルマンの代表作にして昨年BFIより「史上最高の映画」に選出された『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』の撮影メイキング。当時まだ20代だったというアケルマンと多くのヌーヴェルバーグ作品に出演し大女優と言っても良かったデルフィーヌ・セイリグがカメラの裏側でどのように切磋琢磨していたかが映し出される。
 おそらく余白の多い台本から自ら汲み取って即興的に感性で演じてほしいアケルマンと、そこに書かれたジャンヌの行動、カツレツを作る段取り一つ一つやカフェオレを作り変えることにしても、監督の意図を汲み理解した上できちんと正しく表現したいセイリグのやりとりが目を引きつける。互いに譲れないところはあるのだろうけれど、どちらも間違いではないし、お互いのバランスを取りながら撮りすすめたから、あの一見単調に見えても目が離せない大作ができたのだと思う。


 にしてもセイリグをパワハラよばわりしている感想を見かけたのはちょっと驚いた。撮影が終わったバックヤードで(あれはクランクアップなのだろうか)この作品に関われたことが今までになく楽しかったと語っていた彼女が、後ろの方でなにか言った(セリフを失念)音響担当の子に「あなたはどれだけ映画の仕事をしてきたの?そんな口のきき方じゃ…」とやり合うところはたしかにうーん、というか編集で残した方も意地が悪いなとは思うけど。そこまでの意図はなかったにしても(というか気まずいなとは思ってもそんなふうに強く感じなかったし、自分は)ハラスメントと感じてしまう人もいるんだなというのは少し驚いた。それが今どきなのだろうか…


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原題:Autour de Jeanne Dielman 監督:サミー・フレイ 1975年製作
(ドキュメンタリー)
@下高井戸シネマ 2023/7/18


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