8/15/2022

ハッピーアワー


 神戸に住む30代後半になる4人の女性たち。主婦、看護師、キュレーターとそれぞれの現在の環境は違っても仲のよい4人組が半ば動員で芙美の勤めるギャラリーのワークショップに参加。それがきっかけで4人の気持ちと生活に少しずつ変化が生じてくる。
 
 離婚の裁判には敗れ自分は一緒に暮らしたくないのに夫は彼女から離れることを望まず、やがてそんな夫の子を宿したまま一人で暮らし慣れた街を離れていく純さん、中学のころから付き合って結婚した夫と息子にお姑さんと平凡に幸せに暮らしてきたところに思春期の息子はガールフレンドを妊娠させ、自分もワークショップで知り合ったバツイチの青年と一晩を過ごし朝帰りした桜子さん、ベテラン看護師として後輩にハッパをかけながら忙しく働き、言い寄ってくる男性複数がいてもなかなか再婚には踏み切れないちゃきちゃき女史のあかりさん、エディターの夫とお互いの仕事を尊重しながら暮らしてきたものの、夫から持ち込まれた若い女子作家の朗読会の企画に不安を隠せない芙美さん。
 それなりに充実しているように見えていた4人が本当はそれぞれの生活に抱えていた小さなひっかかりが、口火を切るような純の桜子への電話、そしてワークショップでの頭の中を空っぽにして肉体的にダイレクトにふれあうこと(といってしまっていいと思うんだけど)をきっかけにまるで意を決したように自分の手で表に晒されていく。たぶん仲のいい友人だからこそ打ち明けていいか迷ってしまうようなモヤモヤって誰でもあるように思うけど、それを自分でどういう形にせよ踏み越えることによってしか解決しないことってあるだろう。それぞれに事件に近い出来事が起きて、その先の彼女たちの生活がどうなっていくのかはわからないけれど、それでも4人の関係は変わらずに続いていくんだろう。

 約5時間半の長尺にひるんでいたのだけれど、観始めたらスルスルと進んでしまった。男性陣の魅力がどうかなと思わないでもなかったけれど、たぶんセリフをああいうスタイルで語らせることで観ている側にプラスに働いているところがありそう。考えてみれば濱口監督のほか作品もきちんと読んでいる風の台詞回しだし。作りがフランス映画っぽいなと毎度思う監督の作品だけど、ついこの前も2時間半超えのフランス映画で爆睡してきた身としてはその違いとはなんぞやと思った。言葉の壁だけではなさそうだ。

監督:濱口竜介 2015年製作
出演:川村りら、菊池葉月、田中幸恵、三原麻衣子


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