7/19/2022

たぶん悪魔が


 新聞紙面を飾ったひとりの若者の死から時間を遡り、その若者シャルルが死に至るまでを追う。 シャルルは常に何か釈然としないものを内に抱えていた。地球規模の環境汚染、大学の数学や化学の授業、クスリ、憂うつの種はわからない。政治的な集会も教会の集まりも、親しい友人たち恋人といても気持ちは晴れず街をさまよう。やがて教会の寄付金を盗んだ疑いで警察に連行されたことをきっかけにふとしたことで銃を手にすることになる。明確な理由のないまま違和感だけが募っていった矢先にあったのは死だったのか、生きていたいわけでもかといって死にたいわけじゃないとは本人も話していたのに。でも、本人も訳のわからないどうしようもない苦悩ってあるのだと思う。バスに乗り合わせた乗客が口々に世の中の不穏を語る、結局見つからないその理由や解決法を「たぶん悪魔が(悪魔のせいだ、ということか)」といって終わるシーンがあったけれど、そうとしか理由のつかない何かが。裕福で育ちの良さそうなシャルルだけど(彼を取り巻く3人の友人もそう)身近なところに大人の影がないのも印象に残る。

原題:Le diable probablement 監督:ロベール・ブレッソン 1977年製作
出演:アントワーヌ・モニエ、アンリ・ド・モーブラン、ティナ・イリサリ、レティシア・カルカノ
@下高井戸シネマ 7/18鑑賞


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