5/11/2022

ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス湖畔通り23番地


 夫を亡くし思春期の息子と二人ブリュッセルで暮らすジャンヌ。まだ暗いうちに起きて寝室の窓を開け放ち丁寧にコーヒーを淹れ、リビングのカウチベッドで眠る息子を起こして朝食をとらせ、学校へ送り出した後、食器を片付けベッドを整え買い物に出る。必要な買い出しを済ませたら夕食の支度をし、午後「訪問者」がやってくる。訪問者が帰った後は丁寧に体を洗い、帰ってきた息子と一緒に食事。食後には宿題をさせ、終わってラジオを聴きながらくつろいだ後には二人で夜の散歩に出かけ、帰ってきたなら寝支度をして眠る。それが彼女のシンプルな1日。

 夫の生前からなのか亡くなってからかはわからないけれど、長いこと保たれてきたのであろうジャンヌの生活のリズムにごく小さな不規則からほころびが生じる。そこからは大きな出来事が起きるわけではないのに少しずつ増長されるズレと堂々巡り的な気持ちの地滑りのような不具合に対処しきれず、彼女自身も呆然とするうちにことは起きてしまっている。決してセリフは多くないけれどひとりの女の3日間の生活を丁寧に追うことで十分に戸惑いや焦りの感情まで伝わってくるところに引きつけられた。単調だけど濃密な200分。

原題:Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles
監督・脚本:シャンタル・アケルマン 撮影:バベット・マンゴルト 1975年製作
出演:デルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ドゥコルト、ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ

シャンタル・アケルマン映画祭
@ヒューマントラストシネマ渋谷

 オフシアターでは何度か上映されてきたシャンタル・アケルマン監督の待望のロードショー劇場での特集上映。本当はもうちょっと観たかったけれど時間的に難しく2本のみ鑑賞。あとで下高でもやってくれないかな…

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