実親によって人身売買されて都会で売春やら犯罪行為に手を染めている東欧圏など出身の子どもたちの存在は実際大きな問題になっているそうで、そんなレポートのドキュメンタリー番組を何度かみたことがあるのですけれど、何だかやるせない作品でした。
サーカス好きのウクライナの少年バーブ。ある日 村にカルーゾという男がやってくる。時々村にやって来て子供たちをベルリンのサーカス団にスカウトして連れて帰っては羽振りのよさそうな生活をさせているカルーゾは皆の人気者。様々な手品を披露してくれる彼をバーブも大好きだ。まとわりついてくる人なつっこくてかわいらしいバーブを気に入ったカルーゾは彼をベルリンに連れて行くことにする。「お前をサーカスの王様にしてあげる」と。
ところがベルリンに着いてみるとサーカスとは名ばかり。カルーゾは集めた子供たちを古いサーカス小屋でスリとして調教しては上がりを巻き上げて私腹を肥やしていたのだ。一緒に村を出た義姉ミマといつの日かふたりでサーカスの王様になれると信じて疑わないバーブは、アルバニアから連れてこられ今では盗人集団の稼ぎ頭の少年マルセルとコンビを組まされて何も知らずにスリを繰り返すようになる。しかしやがて上がりをこっそりため込んでいたマルセルがカルーゾの怒りを買い別な組織に売り飛ばされ、また旅の途中で村に帰ったと聞かされていたミマも実は同じベルリンの売春組織に売り飛ばされていた事実を知る。たくさん獲物を稼いでチャンピオンになればミマを助け出すことが出来るとカルーゾに言い聞かされたバーブは「盗人の王様」になろうと決意するが…
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監督のI・フィラはチェコ出身とのこと。ここでのカルーゾはたぶん彼自身もどこか別な国から出稼ぎにやってきたか連れてこられたかした人。バーブのことはかつて空中ブランコ乗りでペアを組んでいてケガを負い薬に頼らざるを得ない生活を送っているユリアとの間の養子に迎えたいくらいに思っている。だから彼のしていることは本当に悪いことであり犯罪ではあるのだけれど、おそらく後のほうでマルセルが「自分を売り飛ばした親を見返すためにここで稼いで大金持ちになってやる」というみたいに成功・金を求めるためはこういう道に進まざるを得ない状況ではなかったのかしらとなんとなく同情ではないけれど空しくなってしまったのでした。
アフリカの飢餓に苦しむ子どもたちを助けるのももちろんよいことだとは思うけれど、もっと身近なところにも食べていくために人として悲しい思いをして、生きていくために犯罪行為に走らざるを得ない子どもたち、また暮らしていくために我が子を売るしかない親たちがいることをボブ・ゲルドフは知ってほしい、と時節柄思ってしまったのでした。
原題:Koeig der Diebe 監督:イヴァン・フィラ 2004年製作
出演:ラザール・リストヴスキ、ヤーシャ・クルティアソフ、カタリーナ・タールバハ
@ドイツ映画祭2005(2005.6.4~2005.6.12)にて
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