ぱっと見 取っつきにくい作品に見えますが、みようによってはそれもまたかわいいおじさんの物語、といっちゃ語弊はあるかも知れないけれどそんな印象が残りました。
ベルント・ヴィレンブロックは旧東ドイツ出身者の「勝ち組」。経営する中古車販売店はそこそこ繁盛して金回りもよく、美人の妻、愛人にはいつでも贈り物三昧。満ち足りた生活を送っていると思っていたある日、店と湖畔の別荘に相次いで強盗に入られる。妻のズザンネは知らない誰かがいつまた自分たちを襲いに来るかわからない恐怖と 口では優しいことをいっても平気で浮気をしている夫への不審でノイローゼ気味になり、一方のベルントも恐怖を感じでいながらもライフスタイルを改めることは強盗たちに屈することになるから、と出来るだけ平静を装うように務めるが、やがてほころんだ糸はどんとんもつれていく。
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親兄弟や学校の先生まで誰もが不満を抱えていた東ドイツの少年時代を経て、今はプチリッチな成功を収めているおじさん。カーステレオから流れてくるお気に入りのナンバーは「Walking on Sunshine」…似合わない、君のクラい外見/雰囲気には似合わない。でも気分的にノリノリ&イケイケどんどんの彼には愛人を持つことも含めてすべてが楽しくてしょうがない、まさに「生」を謳歌しているということなのでしょう。
冒頭の語りで少年時代にはまわりが不満をこぼして自分に八つ当たりやとばっちりが飛んできてもへらへらしてたと言ってたけれど、彼もまた同様に発散できないものを持っていてその反動が出ているというか、金にも女にも乗れる時に乗らなきゃ損みたいなところがある。だからそんな上り調子の生活に突然外部、というか東側からの横やりが入ったことは奥さん以上にショックじゃなかったかなと思います。自分は東出身の成功した経営者として東欧圏からの労働者も雇い入れてるし、顧客にはロシア人もいる。皆に尽くしてるのによりによってなんで自分が強盗の標的にならないといけないんだ、ちょっとぐらいいい思いしたっていいじゃないかというストレス。
でもそんなストレスが加われば加わるほど頑固にでてしまうのが良くも悪くも典型的頑固強固なドイツ人ベルント。そんな彼が死をモチーフにして絵を描き続けているバルダーゼーと出会い、最初は画家がなぜ「死」をモチーフに選んだのか理解できないけど、一連の事件を経験することによって死は無だけでなく再生も生じさせるものだと気づくところである意味「雪解け」「民主化」するのではないのでしょうか。
そんなに肩肘張らなくたって人生楽しく生きていけるんだよね。
原題:Willenbrock 監督:アンドレアス・ドレーゼン 2005年製作
出演:アクセル・プラール、インカ・フリードリヒ、アンネ・ラトル=ポレ
@ドイツ映画祭2005(2005.6.4~2005.6.12)にて
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