1/22/2025

MR. JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男


 レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジを初めて目にしたその日から「自分はペイジになるんだ」と決心して邁進し、現在も進化を続けるジミー桜井こと桜井昭夫さんの、ほとんど「ペイジ道」といってよい道を究明する生きざまを記録したドキュメンタリー。
 自分の知り合いにもツェッペリンのコピーバンドやトリビュートバンドでジミー・ペイジになりきっているギター弾きは何人もいたけれど、桜井さんのそれは「コピー」や「トリビュート」などでは済まされない。彼は「ジミー・ペイジになること」を目標としてやっている人なのでそのこだわりには一切の妥協はない。楽器や衣装、プレイテクニックどころか、インプロビゼーションてんこ盛りといわれるツェッペリン各時代のライブステージを、その呼吸に至るまでほぼ完全に再現し、ペイジさんのレガシー伝道師として後世に伝えることを自らの使命としているといっても過言ではない。なにしろ桜井さんの演奏を見にライブハウスを訪れたペイジさん本人の後ろからの映像がほとんどシンクロ状態で桜井さんの演奏に吸い付くように見入っているのだから、もう本人お墨付きどころのレベルじゃ済まないことは明白だろう。
 ご家族やステージ衣装や機材調整などなど様々な協力者の手を借り、ペイジ本人にも認められ普通ならここでめでたし、と終わってもよさそうなものだけど、そこから桜井さんのアメリカ挑戦記の章は始まる。彼の地でトリビュートバンドがライブ活動で生計を立てられるのも感心するけれど、大抵のそんなミュージシャンにとってそれはあくまでも観客を喜ばせて稼ぐための「音楽ビジネス」であり、当然「道」とは相容れない。「何年何月のどこそこのステージを再現しよう」と持ちかける桜井さんに、最初のうちは「この人、すごっ」と尊敬の目を向けるメンバーもやがては「ちょっと勘弁してよ」になっちゃうのも無理はない。そして、トリビュートバンドで舞台演出に至るまで徹底的な再現ライブの来日公演を行って成功裏に終わっても結果的にバンドを離れることになってしまう。意見というか気構えの相違からバンドとの別れを繰り返しても、桜井さんの気持ちにブレが生じないことがすごい。そんな彼の覚悟をもった活動がジェイソン・ボーナムの耳に届いて、本当にツェッペリンの遺伝子を受け継いだバンドに参加することになるのだから、もういうことないだろうとも思うのだけど、そんなジェイソンにも「今のところはこうだったよ」とか指導を入れちゃってる桜井さんがお茶目でクスっと笑える。

 誰かそのものになりたいと願うのは物理的には当然不可能なのだけど、それでも限りなく近づくことは可能なのだ。そのギャップをちょっとずつでもどれだけ詰められたかという部分で桜井さんは常日頃努力している。そんな姿をなんだか羨ましくも思いながら見ていた。
 桜井さんの映像をネットで偶然見かけて撮影のオファーを出したという、監督自身も何年何月のどこそこのステージにちゃんと反応できるそうだから相当コアな人だけど、そんな二人が出会ってこうして記録が残せたのはとても幸福なことだったと思う。
 そうそう桜井さんのバンドに元クワイエット・ライオットのフランキー・バネリが参加していたのは驚いた。あとツェッペリンの楽曲の使用許可をとるのが難題でと監督もパンフに書いていたけれど、あんなにたくさんよく許可がおりたなとは思った。そこは本当にジェイソンとペイジさんお墨付きの効果なのかな。

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原題:Mr. Jimmy 監督:ピーター・マイケル・ダウド 2023年製作
(ドキュメンタリー)


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