去年のヴェネツィア映画祭に出品された作品。マッツァクラーティ監督の作品はこの前にイタリア映画祭で上映された『虎をめぐる冒険』もロマンチックな恋物語とひとくくりで言ってしまうのもちょっと違う ノワールな雰囲気もあるのにどこかすごくファンタジーなお話ですごく好きだったのですけれども、今回はかなり正当な恋の物語。
1936年 赴任先より故郷の支店に転勤してきたジョヴァンニは思わぬ恋と再開する。相手はかつて彼がすでに既婚であったにもかかわらず激しい恋に落ちたマリアという漁師の娘。彼の転勤と共にどうせ叶わぬ恋と自然消滅したはずの恋だったのに、再会したことでマリアの心は揺れ動くがやはり恋しい想いには勝てず再び二人は密かな関係を持つ。しかしそんな2人の仲につけ込んだマリアの父親の金の無心に腹を立てたジョヴァンニは彼女を愚弄する。何も知らなかったマリアは激しく傷つき「金は必ず自分が返すから」と言い残し彼の元を去る。その晩マリアの家の前にたたずみ、彼女と父親が激しく言い争う声を耳にするジョヴァンニ。
それから数ヶ月後、イタリア軍が東アフリカに侵攻を開始し本格的な戦争の足音が聞こえてきた頃、ジョヴァンニもまた招集されていた。そして兵舎のあるリヴォルノにやって来た時、再びマリアと再会。彼はマリアにひどいことをいったことを詫びて「君を愛している」と伝える。そしてマリアが実家に帰らない日は下宿先で幸せなひとときを過ごすが、ある日ジョヴァンニの家族が彼の息子の誕生日を祝いに町にやってきた場面を偶然目にしたマリアはとある決意をする。
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もしかしてなんてことのない不倫の話なのかもしれないけれど、S・アッコルシ演じるところの無い物ねだりな恋に恋する男性と、どんなに相手が愛しくて恋しくても結局は現実、自分と相手の生きる道は添うことはないのだと強固なまでの意思でもってひとりで歩こうとする女性の互いの気持ちの温度差のようなものの描きかたに個人的にはすごく感情移入してみていました。初めての再会の後、帰宅する電車の中でいそいそとばれないように身支度を整えるジョヴァンニの姿になんだかな困ったダンナだわとクスっとし、別れてしばらく年月の経った終戦後に再びマリアと3度目の再会を果たし、「あの時の僕らは本当に愛し合って、幸せだったよね、ね?」と彼女に語りかける彼は妙に哀れでちょっと涙してしまいました。もしかしておめでたい男なだけなのかもしれないけれどかわいいというかなんというか。アッコルシは正直、表情が豊かなほうでもないしどっちかと言えば何考えてるか分かんない役がはまるというかそんな風に実は思っていたんですけれど、この映画のジョヴァンニはそのあまり分け分かってない、きっと最後の列車に揺られながらも恋の終わった現実、マリアが何も言わなかった本当の理由がきっと分かっていないで戸惑ったままなのではないかなというあたりがぴったりはまっていたようにも思います。
ノスタルジックな調べは十分はかない恋のファンタジー的な雰囲気を高めてくれるのですが、二人が激しく言い争いをしたあとに夜明けの海を背景にジョヴァンニにもたれながら語るマリアの告白の場面であったり、フェスタの回転ブランコの場面がとにかく美しいです。あとはマリアとジョヴァンニの悲恋のすぐそばで起こる車掌のフランキーノおじちゃんの恋。人妻のアルミダおばちゃんを蝶よ花よと言葉で口説き、やがては神様がその思いを叶えるかのようにハッピーエンドに終わる彼の恋はやっぱりロマンチックで、かわいらしかったのでした。
やっぱりわたしはこの作品好きです。
原題:L'amore ritrovato 監督:カルロ・マッツァクラーティ
出演:ステファノ・アッコルシ、マヤ・サンサ、マルコ・メッセーリ 2004年製作
@イタリア映画祭2005(2005.4.29~2005.5.4)にて
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