5/22/2005

ベルンの奇蹟

 1954年7月、敗戦後のドイツの都市エッセン。マチアスはパブを経営する母親、兄姉と暮らす11歳の男の子。同年代の子供たちと同じようにサッカーが大好きだけどちょっとひ弱な彼は仲間の中でもおみそ的な扱いで自分に自信がない。でも自慢できることがひとつ。それは地元のサッカーチームのエース、ボスことヘルムート・ラーンの付き人をしていること。マチアスがみている試合では必ず点を決めることができるとヘルムートは彼をかわいがり、マチアスにとってもそんなヘルムートは彼の一番のヒーローで父親や兄貴のように慕っていた。ボスがその年スイスで開催されるワールドカップの代表選手に選ばれるという吉報が届いた時、マチアスの家にも朗報が届く。それはマチアスが生まれる前に大戦に出かけソ連の捕虜となっていた父親リヒャルトが11年ぶりに帰郷する知らせだった。でも長く辛い捕虜の生活から解放されたものの戦後の新しい暮らしになじめずトラウマに苦しみ、家族にも辛く当たってしまうリヒャルトにマチアス一家は困惑し、またW杯を戦うドイツチームも最強のライバル、ハンガリーに1次リーグで大敗を喫し、なかなか試合に出してもらえないボスにも不満が募っていた。はたしてマチアス一家は父親と和解できるのか、そしてドイツチームは国民の期待に応えることができるのか。

 「奇跡の大逆転」といえば…って大逆転といえば先日のチャンピオンズリーグのリヴァプールvs.ミラン戦も記憶に新しいのですけれど、敗戦後のワールドカップで当時の強豪ハンガリーを0-2から逆転で破り、戦後の荒廃した国と人々の心に希望を与えたドイツ代表の優勝。それにからめて抑留生活から様々な問題を抱えて家族の元に帰国した父親とそれまで会ったことのなかった末子との絆が再生される様子を描いたさわやかな感動作です。サッカー好きには当時の様子を再現したスタジアムの様子やら熱気伝わる実況に加えて、今じゃすっかりおなじみのアディダスのスパイク誕生の様子にもクスッと笑えるのではないでしょうか。作品はそんなわけで十分に楽しめたのですけれど、たぶん字幕が英語からドイツ語監修をつけずに訳していると思われ一部字幕の尺に対して内容スカスカだったのがちょっと不満。

 監督のゼンケ・ヴォルトマンの作品は94年くらいの東京国際映画祭で「Der Bewegte Mann(『アクセルの災難』とか邦題がついていたような)」をみたことがあるのですが、たしか気の利いたコメディでヨーロッパ方面でもヒットしていた記憶があります。フィルモグラフィーをみたところアメリカでもトム・ベレンジャーらが出演している『ハリウッド・ゲーム』という作品を撮っていてビデオが出ているらしいのでみてみたいです。

(@シャンテシネ)

原題:DAS WUNDER VON BERN 監督:ゼーンケ・ヴォルトマン 2003年製作
出演:ルーイ・クラムロート、ペーター・ローマイヤー、サーシャ・ゲーベル

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