4/21/2005

忘却のバグダッド

  バグダッド生まれでスイス在住のサミール監督がイラクでコミュニストとして活動したことのあるユダヤ系の父親のルーツを探すべく父と同じ境遇であり、かつてバグダッドから約束の地であるイスラエルに渡った4人のユダヤ人作家と、イラク系のユダヤ人として建国間もないイスラエルに生まれ育ち映画にみられるイスラエル国内における西洋系ユダヤ人のイラク系(東洋系)人への差別を発表し一躍時の人となった、現在はニューヨークで教鞭を振るう女性社会学者に話を聞くドキュメンタリー。

 バグダッドのユダヤ人であること、イスラエルのアラブ人であることのそれぞれの思いを聞いていると、私たちにはあまり馴染みのない中東の複雑な事情が、やはり悲しいくらい複雑なのだなということが伝わってきます。印象的だったのは元共産主義に傾倒していた作家たちのそれぞれ。バグダッドにいた時にはそれなりの活動時に迫害を受け、イスラエルにやって来てもイラクからやって来たということで迫害を受け、かの地を懐かしむ一方で建国したイスラエルで生まれた子供にとってはイスラエルが母国になるのだから自分は腹をくくったのだと語るサミ・ミハエルさんや、対照的にイスラエルで暮らしつつも自分のアラブ性を忘れたくない、自分がらしくあるにはやはりアラブ語でものを伝えるべきという姿勢を貫いているサミール・ナッカーシュさんのお二人の話。邦訳が出ているかどうかわからないけれどご著書を読んでみたくなりました。

原題:Forget Baghdad 監督:サミール 2002年製作 イラク・スイス・ドイツ合作
出演:サミ・ミハエル、サミール・ナッカーシュ、ムッサ・フーリ、シモン・バラス、エラ・ショハット
(ドキュメンタリー)
@アラブ映画祭2005(2005.4.15 〜 4.25開催)

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