3/15/2005

フェスティバル・エクスプレス

 1970年、時代を代表する豪華なミュージシャンがひとつ列車に乗って寝食共にしながら5日間、カナダを東から西へと横断ツアーを行った。その名も“フェスティバル・エクスプレス”。当初から劇場公開される予定で5日間の列車の旅を車内からステージまであますところなく撮影されていたこのフィルムはツアーの終盤でプロモーターと映画のプロデューサーの間でトラブルが発生し、一部持ち去られるなど日の目を見ることはありませんでした。やがてオタワのカナディアン・ナショナル・アーカイブスに保管されていることが捜索の結果わかり、それから音声の調整や権利関係の問題をクリアしたり関係者へのインタビューの撮影など見つかってからさらに約10年もの歳月をかけてようやく公開の運びになったという曰く付きの映像です。

 グレイトフル・デッド、ジャニス・ジョプリン、ザ・バンド、フライング・ブリトー・ブラザーズなどなど今ではもうホントに伝説も伝説のミュージシャンが一同に集まってツアーをしていたなんてわたしは全く知らなかったんですが驚きました。ツアー用に改装された車内のビュッフェでジェリー・ガルシアとかジャニスとかへべれけになったリック・ダンコとか延々々セッションしてるんだもの。バディ・ガイが「寝室に戻っても眠るのがもったいなくてまた戻ってきたものだった」とインタビューに答えているようにみんなリラックスした表情ですごく楽しそうにアドリブかましてる。実に普通の単なる音楽バカの集まりでみていて微笑ましいんです。コンサートが進むに連れてステージでもほかのバンドの演奏の時に飛び入りしたり、ステージの下の方でワイワイ言いながら見てたりしてすごくいい感じ。

 驚いたっていえばこれだけのメンツのツアーを当時14ドルっていうのがどれぐらいの価格にあたるのかちょっと見当がつかないんですが、高すぎるといって会場の外でお客が大騒ぎして警官隊とやり合ったりする場面。レイク・プラシッドかどこかではそこの市長が市民のご機嫌取りかなんか知らないけれど「うちの市の青少年をただで入場させるべし」とかわざわざ直談判しに出て来ちゃうんだから笑っちゃいます。インタビューに答えていた主催者のおじさんはパンチを食らわしたと言ってましたが。いくら当時のこういった音楽イベントがフリーコンサートにすべしみたいな傾向があったとはいえ、そりゃちょっとムシがいいってものでしょう。

 ステージ演奏場面も各々よいのですけれどシャ・ナ・ナは楽しかったしグレイトフル・デッドもステージ車内共に存在感たっぷりというかジェリーはこのツアーの核という感じ。ザ・バンドもピチピチしてるし…ってとにかくハシャいでるメチャ愛らしいリックにわたしの目は釘付けだったのですけれど、『ラスト・ワルツ』と比べてみると演奏曲もかぶってるしおもしろいと思います。

 あとはやっぱりジャニス!絶品としかいえません。ツアー最終日のステージで主催者にジェリーと汽車の模型を渡しながら「すっごく楽しかったから、また次も必ず呼んでね」とか言ってるのに終わった2か月後くらいに亡くなってるんですよね、彼女…。このミニセレモニーに引き続く「TELL MAMA」なんてほんとに鳥肌ものにすんばらしいです。本人も乗りに乗っててすごく楽しんでやってるのが手に取るように分かる。車内でのセッション中にジェリーから「初めてみた時から愛してる」と告げられたジャニスが一拍置いて「またまたんなこと言っちゃってキャッハッハ…」と笑い転げてる場面と合わせてずっと忘れられない。たぶんDVDでたら買っちゃうな。

原題:FESTIVAL EXPRESS 監督:ボブ・スミートン 2003年製作
ドキュメンタリー
@シネセゾン渋谷


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