1/09/2005

颱風(タイフーン)

  早川雪洲最初期のサイレント作品。雪洲が扮するのはパリ駐在の日本の諜報員トコラモ。フランス人女優エレーヌと交際しているがこの女がなかなか独占欲の強い甘えんぼでいつも書類とにらめっこしているトコラモに構ってもらいたくてしょうがない。ある日はるばる日本から渡仏してきたヤスナリくんの歓迎会を開いている最中にも「わたしを差し置いてそんな真似はさせないわ~」と邪魔しにやってくる。そんなわけでせっかくの日本人同士の会合を邪魔されたトコラモは彼女をほどほど困った女だと思いつつも、自分もほれているから結局いちゃいちゃしている。

 ところがそんな最中にエレーヌの元カレがやって来て、彼女と自分は結婚まで誓った仲なのに オイオイ…と泣き言を言い始める。一応元カレを慰めて帰したあと 憤懣やるかたないトコラモはエレーヌをお前は男なんかいないと言ってたくせにこの嘘つき女!と責めるけれど、最初のうちはしおらしく泣いてたエレーヌは弁解に耳をかさないトコラモに逆切れ。

「今まであんたに構ってきたけどもうやめた。元の男とよりを戻してあざ笑ってやる。あんたもあんたが忠誠を誓ってる日本も地球上の黄色いシミだわ!(←すげーセリフ-笑)」とまぁ捨てぜりふを吐いたところ今度はトコラモが逆上し力あまって彼女を殺しちゃうんですね。あらあら。とはいえ彼は諜報員として報告書作成の任務があるわけでそんなトラブルを引き起こして国への奉仕が怠るといけない。というわけで、相談されたパリの日本人役人たちが考えついたのが誰か別の人間を犯人に仕立て上げて警察に差し出すこと。すると「では僕が先生の替わりに出頭いたします、それがお国のためになるのなら」と申し出たのがパリにやってきたばかりのヒロナリくん。というわけで哀れヒロナリくんはお月様のウサギさんのようにその身をお国に捧げてしまうのでした。

 国のためなら命も省みない若い青年の愛国心もなんだかねと思うけどやっぱ恥ずかしいのが国益最優先といいつつも勝手な都合で簡単に踏みにじってしまう役人のご都合主義。今も昔も内外関わらず外部の人の目にはそんな風に映っていたのでしょうか、日本の役人ってば。なんかヤなもの見せられた気がして日本人ならいい気はしないでしょうね。『チート』もそうだけど相手の女だって悪いのに。ちょっと居心地悪かったかも。

原題:THE TYPHOON 監督:レジナルド・パーカー 1914年製作
出演:早川雪洲、グラディス・ブロックウェル、ヘンリー・コタニ
@シネマの冒険 闇と音楽 アメリカ無声映画傑作選
 (2005.1.5~1.16開催)

0 件のコメント:

コメントを投稿

(※営利目的、表題に無関係な主義主張・勧誘のコメントは削除します。ご理解ください)

popular posts