なんだかけったいな話でしたけど、あれほど神の怒りを怖れていた雪洲扮するトヤサン父が娘の幸せを祝福しないような神はもう信じないと改宗し、町の人々になぶり殺しにされるなどちょっと変わった殉教映画とも言えるかも。
武士の身ながら今や漁師に身をやつして海辺の小屋で慎ましく暮らすヤマキとその娘トヤサン。ある日トヤサンが遠出した浜辺で波と戯れていると村の衆たちが見慣れない若い娘に興味を持って集まってくる。ところがそんなところに村の預言者が現れて「この娘は呪われた家の娘。関わるでない」と遠ざける。傷ついたトヤサンは家に帰るとエックエック…としゃくり上げながら「今日ね、今日ね、こんなこと言われたの…」と父親に浜辺の出来事を説明すると彼が取り出したのは1巻の巻物。それはかつて神前で殺傷事件を起こしたヤマキの息子が神の怒りに触れ、家の血筋が絶えるよう呪いをかけたばかりか仮に娘がどこかに嫁いだとしてもその時には桜島が噴火して家々をすべて焼き尽くすであろうという内容の呪いの巻物だった。
ところがトヤサンは負けない。何も悪いことはしていない自分たちをそんなひどい目にあわせるような神さんなんてもう信じない!と神様を祭ってあるほこらで宣言。その時空はかき曇りなんと突然嵐が。トヤサンの不信心が神を怒らせてしまったのか。
そんな頃はるか沖合を航行中だった1隻のアメリカ船が時化た海で難破、翌朝乗組員の1人トムがトヤサンの浜辺に流れ着く。トヤサン父娘の手厚い介護で元気になったトムは二人と一緒に暮らすようになるが、やがてトヤサンに思いを寄せるようになりプロポーズする。でも彼女の返事はノー。事情を涙ながらに説明するトヤサンにトムはこう提案する。「では君はそんな神様を信じるのではなく、キリスト教信者に改宗すれば?」というわけで二人はヤマキを説得し村のキリスト教教会にそろって出かけていくが、トヤサンの結婚により災いが引き起こされることを怖れたの町の衆は二人を阻止しようと襲いかかる。果たして二人の運命は、そして神の怒りは本当に現れるのか…?
とまあ ながながとストーリーだけ書いてしまいました。西洋の神様と東洋の神様の違いは祟るかどうかの違い、みたいな事を聞いたことがあります。でも西洋にだってモーゼの十戒みたいに人の不信心というか戒めを守らないことに対する天罰のようなものはあるし、でもそれって後々まで尾を引くような祟りとは違うのかな。
『颱風』同様にトーマス・インス製作の作品ですが、両作品とも冒頭に出演する役者が1人ずつ出てきて挨拶する映像がついていて(衣装も紋付き袴から映画の衣装に替わったりする)なかなか凝ってるなぁと思いました。両側に掛かっているカーテンの幕にちゃんと日本語でインス/會社とか刺繍してあるのもかわいい。
原題:THE WRATH OF THE GODS 1914年製作
監督:レジナルド・パーカー
出演:ツル・アオキ、フランク・ボゼー、早川雪洲
@シネマの冒険 闇と音楽 アメリカ無声映画傑作選 (2005.1.5~1.16開催)
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