1/15/2005

蛟龍を描く人

  ヨセミテ公園を箱根にみたてて山で気ままに暮らしていた才能豊かな画家テツと弟子入りした先の大家の娘ウメコのファンタジー溢れる恋物語。

 山の神によって龍に姿を変えられた姫といつの日かめぐりあうことを信じて龍の画を描き続けているテツ。後継者に恵まれず嘆いていたカノウ派の大家インダラはそんな彼の絵を見て  この男こそ自分の後継者にふさわしいと彼を自分の所に連れてきますが、野生児のテツは里の暮らしにはなじめません。こんな暮らしにくい家にはいられない、と出ていこうとした矢先に目にしたインダラの娘ウメコ。彼女こそ自分の追い求めていた姫!と一目惚れしたテツは「じゃあ弟子になれば娘を嫁にやろう」というインダラの言葉のまんまに、画家に弟子入りしウメコをめとります。

 でもそれからというものはぱったり画を描くことをやめてしまったテツ。「姫を手に入れたからもう絵は描かなくてもいいんだ」という彼にウメコは心を痛めます。そして自分のせいでテツの才能が失われてしまった。自分がいなくなれば…と考えた彼女は滝に身を投げてしまいます。一時は悲嘆にくれるテツでしたがある晩幻のように目にしたウメコの姿に誘われるままに再び絵筆をとった彼は素晴らしい絵を書き上げ画壇に認められる。そして成功を手にしたテツに奇跡が…。

 気ままな山暮らしで作法も知らない野生児テツちゃん。普段は野人なくせにウメコに一目惚れすると、月明かりに誘われて庭に出てきたという彼女に「俺の愛が君をここに導いたんだ」なんてロマンチックなセリフを語ってしまうところがいかにも芸術家。雪洲とツルさん実際のご夫婦のやり取りがなんともかわいい、というかほほえましいです。

 『火の海』同様日本が舞台になってる外国産の映画ですが、こちらは出てくる役者さんも日系の人々ばっかし。動いてる口から判断すると『火の海』の時には英語じゃべってるっぽいなぁと思ったけれど、こちらのほうはたぶん日本語英語チャンポン?ときどきテツのしゃべってる箇所で口があきらかに「ナンダコノヤロー」と動いてるところがあってそれもまた楽しかったです。雪洲作品4本みた中でこれが一番珍品かもしれないけれど、なんとなく一番好きでした。

原題:THE DRAGON PAINTER 監督:ウィリアム・ワーシントン 1919年製作
出演:早川雪洲、ツル青木、トーヨー・フジタ
@シネマの冒険 闇と音楽 アメリカ無声映画傑作選
 (2005.1.5~1.16開催)

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