1/29/2005

キス・オブ・ライフ

 国連職員として紛争地域へ支援物資を調達するために年中留守がちなジョン。妻のヘレンはそんな夫の仕事を誇りに思いながらも、年頃の娘とやんちゃな息子、老いた父親の世話や自分の仕事に追われ すり切れそうな心を戦っている。家のことを省みない夫との関係にちぐはぐなものを感じなだら。その日は彼女の誕生日の2日ほど前の朝。クロアチアから週末には帰ってきて家族と過ごす約束だったジョンから戻れないと言う連絡をうけたヘレンは堰を切ったように日頃の感情を口にしてしまう。仕事に出かける途中の路上、二人で過ごした幸せな日の写真を手にしばし想いにふけるヘレン。走ってくる車にも気付かずに…。一方ヘレンの「もうやっていけない」という言葉に思わず電話を切ってしまったジョンは荷物一つを抱えて言葉も満足に通じない運転手の車に乗り込んで家路を急いでいた。

 ふと消えてしまった自分の命、家の中を普通に行き来しやがて自分の死を悟り戸惑うヘレンの魂、いまだ至る所に死の影が残るクロアチアから家族の元へ戻る途中道に独り置いていかれて見知らぬ土地をさまようジョン、ふたりの夢とも現実ともつかない死と現実の世界が交差する様子やまわりで二人の関係をみている子供たち、おじいさんの感情の描き方にとても繊細な印象を持ちました。特にヘレンの事故を偶然に目迎してしまう男の子がお姉ちゃんやおじいちゃんに何と言ったらいいものか、どうしたらいいのか戸惑う様子がすごくうまかった。P・マランのいかにも普通のイギリスおじさん具合がとても好き。当初ヘレン役にキャスティングされていたのは『ビフォア・ザ・レイン』のカトリン・カートリッジだったそうですが、彼女の急死で急遽抜擢されたというI・タブコウナイゲの透明感が素敵でした。

原題:KISS OF LIFE 監督:エミリー・ヤング 2003年製作
出演:インゲボルガ・タブコウナイゲ、ピーター・マラン、デヴィッド・ワーナー
@ユーロスペース

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