7/03/2004

SILMIDO -シルミド-

 '68年、北朝鮮の工作員による大統領襲撃未遂を受け、その対抗措置として組織された684部隊。彼らの目的は金日成の首を取ること。死刑囚や街のゴロツキなどが極秘裏のうちに集められたのは仁川沖にに浮かぶ無人島 実尾島(シルミド)。彼らは約3年もの間、軍による過酷な訓練に堪え、やがて最強の兵士と化し任務遂行の日を待っていた。ところが政権が代わり北に対する政策も融和の方針が打ち出された時、平和的な南北統一への道を国際的に表明したい政府にとって684部隊の存在はまさに邪魔なものとなる。国際社会の非難を恐れた政府は隊長に隊員抹殺を命じその存在を闇に葬ろうとするが…

 いきなり余談ではあるのですが、去年みちのく国際ミステリー映画祭で韓国の監督やプロデューサーと日本の若い監督さんとのシンポジウムが行われた際に「韓国で北朝鮮との問題を扱った作品がいまだに好まれるのはどうしてなのか」といった内容の質問が場内の観客からありました。もちろん韓国内の厳密な映画事情は必ずしもそうでないにしろ日本に入ってきて全国的なチェーンを組んでロードショー公開されている韓国映画というのは…今じゃその映画祭の開催された約10ヵ月ほど前とも全く状況が変わっているとは思いますが…「シュリ」や「JSA」「ユリョン」とか一見南北問題を扱った映画が主流のような感じでしたから そういったイメージを持つ観客がいてもそれはそれで自然だろうと思ったのですが、その時にプロデューサーの方がおっしゃっていたのは「そういう問題はあまりにも身近すぎる現実で映画よりも日常で報じられるニュースの方がまるで映画みたいだと思うし恐ろしい。本当はそういった作品は誰も観たくも作りたくもないのでは」というようなこと。その時には「なるほど、そうだろうなぁ」と納得したものの、その後この「シルミド」や「ブラザーフッド(太極旗を翻して/なびかせて)」が韓国で空前の大ヒットを記録しているという話を聞いて、もちろんそれって社会現象というか国のしてきた過去に対する人々の関心が大きいということで 熱烈に作品を愛し支持されているのとは大きく違うとは思いますけど、「やっぱこういう映画って人気があるというか入るものなのね」と改めて思ったのでした。もちろん身近なところにある北の存在という要素があったにしても、いまだにこういった内容の作品に大きな関心が持たれ、多くの人々が映画館に足を運んでいる実情というのは日本よりも健全なのかなぁともちょっと思ったり。

 さて映画は本国でもこれまで一般には真実が伏せられよく知られて来なかったかったくらいなのだから、外国人の私らも知るわけがないのですけれど、国というか政権に翻弄された部隊の結成から消滅までという悲しい過去の歴史が描かれます。どこの国にもあることなのでしょうけれどもね。彼らが最終的に思いを遂げるために北に向かったのではなく、本土の大統領の元だったという点でご覧になった方にはいろんなご意見別れているようですが、個人的にはやり方はともかく、大統領のお墨付きをもらうべく陳情に向かうところまでは彼らの心情も理解できるような気がします。
 でも事実を元にしているとはいえ…本国でも元隊員の家族から映画の設定に関して事実と異なると訴訟が起きているそうですが、やっぱりフィクションですしね。途中までは超オニだったのに命令が下ったら実は(というより唐突だったような気がしないでもなかったけど)いい人だった副隊長が隊員たちのために買ってきたキャンディー袋の場面とか、バス立てこもりの場面などは映画としての見せ所というか泣かせどころなのでしょうし…。その辺の後半がいきなり情に訴えるような泣きが立て込んでしまったというかツメ込まれたような感じがちょっと残念でした。物語導入部の北の工作員部隊の潜入やらソル・ギョング扮するヤクザのカンが結婚式場に乗り込んできてその後町を逃げ回るシーンとかは迫力あったし、グイグイ引き込まれたんですけれども。その他劇中に登場した北の労働歌?や囚人の家族は皆等しく罰を受けるみたいな連座制は見ていた時にはちょっとよくわかりにくかったかも。その分事件の事実やバックグラウンドなどなどいろんなところで向学心/というか興味をそそられる作品でありました。(@渋谷東映)

原題:実尾島 監督:カン・ウソク 2003年製作
出演:ソル・ギョング、アン・ソンギ、チョン・ジェヒョン、ホ・ジュノ

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