いきなり景色の話でごまかすわけじゃないけど、舞台になるヒランクルはアルプス近郊にあるらしいんですけれどすごく自然がきれい。いかにもバイエルンって感じです。最初のほうの印象からすれば久しぶりの帰郷を決心したレネの心の動きがきれいな風景にきれいな曲がかぶって描かれてちょっとしたPVみたいに見えないこともないんだけど、中で起きることは結構シンドイ。
父親の誕生パーティに出席するため故郷ヒランクルに帰省するレネ。母親との諍いが元で家を飛び出して以来、彼女はベルリンで暮らしてきた。レネとの再会を喜ぶ父と彼女をぎこちない笑顔で迎える母。ふたりの中は互いに愛人を持つほど冷め切っていた。久しぶりに囲む家族の食卓には両親とレネ、弟で俳優をしているポールとその幼なじみで今は彼女たちの農場の番人かつ母親の愛人の青年というメンツが並びどことなく気まずい雰囲気が流れる。そんなとき招待客として現れたのが両親の学生時代の友人という初老の男ゲッツ。どことなく動揺を隠しているような母親の雰囲気をよそにレネとゲッツは次第に惹かれあっていくが…。
農場の管理人とはいえ愛人関係にある青年を家族の食卓に同席させてる母親(実はその青年、弟と単なる幼なじみ以上の関係があったんじゃないかと臭わせるところもあり)。レネにしても本来の帰郷の目的は普通に考えれば母親との和解みたいなところにあるのかと思いきや、歩み寄りを感じさせるというより小さい頃にどんなに自分が傷ついたかそれを「わかってよ!」とアグレッシブに迫ってるような。なんとなく和解というより女として母親と対等にやりあえるようになったから戻ってきたような印象を受けないこともなく、なんかきれいな映像に不釣り合いなギスギス感。ところがお母さんのほうがやっぱり一枚上手だった…。父親の誕生パーティ当日にいきなり彼の愛人を勝手に呼び寄せて「やましいことしてるのは自分だけじゃないから、こうすることで我が家の秩序は保たれる」みたいな演説ぶっちゃったうえに、どさくさに紛れたとはいえこれまで隠し通してきたレネの出生の秘密まで暴露してしまうんだもの。当然レネは激しく傷ついた上にまたも母親を罵倒して元の木阿弥という気もするんですが、そこまでして傷つけあわなくても~と居たたまれなくなってしまったよ。
母親のほうにもなんかしら苦悩はあってそれが心中まで考えた過去の大恋愛によるものなのか、ええとこの生まれにもかかわらず家族の愛を受けずに育ったからとかそういうバックグラウンドがあるみたいなんだけど、わたしの理解が足りないせいかその辺がボヤけて正直よくわからなかったのよね。それにしてもお父さん以下男性陣は踏んだり蹴ったりだよなぁ、と激しく同情。
というわけでこの家族ってこの後どう関係を修復してくのかしら(できないだろうなぁ…)と微妙にヤな気分になってしまったのでした。でも人生は続くってことなんだろうけど。
原題:Hierankl 監督:ハンス・シュタインビッヒラー 2003年製作
出演:ヨハンナ・ヴォカレク、バルバラ・スコヴァ、ピーター・シモニシェク
@ドイツ映画祭 映像の新しい地平 HORIZONTE 2004
(2004.6.03~6.26開催)
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