1978年に起きたテロ組織「赤い旅団」によるアルド・モロ首相の誘拐/殺害事件をベースにした作品。事件を引き起こした男女4人のテロリストとモロとの約50日間に渡る生活が各々の心情の変化とともに描かれます。
ローマのとあるアパートに新しく部屋を借りた1組の男女。夫婦を装った二人はある犯行計画を企む赤い旅団のメンバー。数ヶ月後、朝から落ち着かない様子でテレビの画面を食い入るように見つめていたキアラは彼ら4人の仲間が企てた計画が成功裏に運んだことを知り歓喜の声を上げる。それはアルド・モロ首相の誘拐。彼らの要求は逮捕されている旅団メンバーの釈放だったが政府は一向に要求を飲む様子がない。やがて仲間の中にも不協和音が流れ出す。
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メンバー中ただ1人の女性、キアラの家族はパルチザンとして大戦の時に闘っているのか(その辺ちょっとつながりが定かじゃないんですが)共産主義的な思想に傾倒していて、そんな中で育った彼女は純粋に腐敗した世の中をよくしたいという一心で旅団の仲間に加わっている。だからモロが家族に宛てた手紙であったりリーダーの男と密室の中で繰り返すやりとりをきいているにつれて、必ずしもモロが自分が思うような腐敗の根源ではなかったことに気づいて、自分たちのしてしまったことに対して本当に正しいことだったのかと疑問を抱いていく。同様にほかのメンバーも「要求が通らなければ人質を殺す」という自分たちが出した結論に逆に追い込まれていく。捨て身で世の中を変えることに燃えたもののうまく事が進まない焦りと挫折から本当に取り返しのつかない犯罪に手を染めることになる青年たちの様子が観ているこちらも息が詰まりそうなほど苦しかったし、ボタンの掛け違えの悲劇といったような印象を受けました。だから余計に最後夢とも現実ともつかないキアラがモロを逃がす場面はかなり強い印象が残ります。実際の事件のことはあまりよく知らなかったし、途中キアラに絡んでくる青年の場面などどういうことなのかなと考えてるうちに話に置いて行かれてしまったというちょっと情けないところがあったので(TT)秋?の劇場公開の時にできればもう一度観たい濃厚な作品でした。
今回上映された『輝ける青春』でも重要な役どころを演じていたL・ロ・カーショとM・サンサがこちらでも主要な二人で登場していますけれど、とりあえずわたしの頭の中でM・サンサ=図書館のお姉さんというイメージが出来上がってしまいました。
原題:Buongiorno, Notte 監督:マルコ・ベロッキオ 2003年製作
出演:マヤ・サンサ、ルイジ・ロ・カーショ、ロベルト・ヘーリッカ
@イタリア映画祭2004(2004.4.29~2004.5.4)にて
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