闘牛ロメロがつなぐ5組の人々の因果な物語。
過去のある母とその娘はレストランで食肉として、ロメロの闘牛中継を観ていた女の子の元には犬のエサ用の骨として、身重の妻をよそに浮気をしている畜産系の研究員の夫には眼球、町郊外のトレーラーで剥製師をしている母と息子の元には角といった具合に、闘牛後に解体されたロメロの肉体を様々な方法で入手した5組の人々が自分たちの間にある過去であったり新しい関係だったり、それまで見えなかったものを手にしながら知らないうちに引き寄せられていくというちょっと変わったお話です。スペイン版「牛に引かれて善光寺」?(…)
ロメロの肉体がアイテムとして使用されているというかそれによって人同士のつながりが再生されたり、または彼との闘牛中に瀕死の怪我を負い植物状態に陥った闘牛士が結果として5組の中の一人から臓器の提供を受け回復し、再び闘牛場に戻ってくるという流れは、なんとなくキリスト教的な復活というテーマもあるのかなと思いました。牛と人の違いはあるけどなんとなく「モントリオールのジーザス」を思い出したりして。
怒濤のように駈けてくる足音と共に赤いベール、というかムレータ?に突進してくる牛の視点のような長まわしで撮られたオープニングタイトルが印象的でそれでお話の中にがーっと引き込まれてしまう感じ。2時間以上ある長尺なんですがところどころぎょっ&クスッとするような不思議な物体…床を転がる牛の目玉だったり、剥製になってる何か分からない動物などの使い方とか、女の子の家にいる牛のようにデカい黒い犬やら、怪しい水泳セラピーやらの挿入がいいスパイスになって中だるみしないような作りになってます(…でももうちょい短くしてもいい気もします)。ちょっと前のフランソワ・オゾンっぽいなと思ったら、監督のD・グレーズは一部で「第二のオゾン」的な売られ方してるみたいですね。
先日テレビでちょこっと観た「真実の瞬間」に続く闘牛が登場する作品の鑑賞だったので、少々闘牛関係の書籍など読んでみたくなりました。まずはヘミングウェイの「午後の死」とか。しかし闘牛を戦い終えた牛さんが食用になるのは正直知らなかったんですけど(…そのまんま供養するだけじゃもったいないとは思うけれど…)お肉って筋肉質で固くないのかしら、と単純に思いました。(@ユーロスペース)
原題:CARNAGES 監督:デルフィーヌ・グレーズ
出演:アンヘラ・モリーナ、キアラ・マストロヤンニ、リシア・サンチェス
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