3/28/2004

エデンより彼方に

 最初のクレジットタイトルの書体や出し方、メロウなテーマ曲からして5,60年代のハリウッド映画を彷彿とさせる造作。どこかで50年代の誰だったか監督へのオマージュ作品だというようなコメントを見たことがありましたがそれも納得。色鮮やかな総天然色系のフルカラーはそのまんまモノクロにしても深い陰影がついてきれいだろうな。

 お話はそれまで何不自由なく幸せそうな生活を送っているように見えたひと組の夫婦の家庭が崩壊していく様をおったもの。まだまだ保守的な時代に庭師の黒人男性とのあらぬ噂やダンナの男色にもかかわらず良妻賢母を貫こうとし最後は自立していく風の奥さまを演じたJ・ムーアは好演というよりあまりに完ぺきすぎ。一見リベラルには見えるけどどこかエセっぽさを感じさせる彼女をはじめ、セラピーを受けてるにもかかわらず妻を捨てて若い男との生活を選ぶD・クエイド扮するダンナ、やっぱりリベラル風な人だと思っていたのに結局はほかの町の人たちと同じ価値観でしかものを見ていないP・クラークソン演じる友人、新しい価値観をもとめて越えられない壁を乗り越えようとしたけれど結局は町を去らざるを得ないような状況に追い込まれた庭師のD・ヘイスバートなどなどまわりのキャストが誰をとっても判で押したようにうますぎて、その完ぺき具合が「ひと昔前のドラマをあえて演じている」的アーティフィシャルな雰囲気を一層強めているような気がします。

 要するに音楽・ビジュアル・語り口などどこをとっても人工的というか作り物っぽくて、あえてそうしているようにしか思えないのですけれど、それがこの作品の狙うところなのかな。ひとりの女性の生き方云々を訴えてるような主題を持った作品というよりもあくまでも狙いはクラシカルなエンターテインメントを追求した作品というような感じがしました。観客を登場人物に感情移入させるというより傍観させることを目的としているような。その辺が変わってておもしろいと思いました。もしかしたら見ているこちらもそれなりになりきってのめり込んでいる風にハンカチでも握りしめて鑑賞するのもひとつの楽しみ方なのかも?(@三軒茶屋シネマ)

原題:Far from Heaven 監督:トッド・ヘインズ
出演:ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド、パトリシア・クラークソン

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