2/17/2025

ジョン・レノン 失われた週末

 


 70年代はじめにアップル・レコードを経てジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻の秘書をしていた女性メイ・パンによる、ヨーコの依頼、というか命によってジョンの恋人として傍らでジョンの活動を見つめて過ごした18ヶ月を回想したドキュメンタリー。

 1973年の後半から75年半ばのジョンとヨーコの別居期間の「失われた週末」についてはファンにはよく知られたことのようだけど、あまり文献を読んだりしていない自分はほとんど知らなかった。その日々を雇い主ジョン&ヨーコに仕えるものとして、ヨーコに命じられるままジョンと過ごしたメイの視点で語られるので、そのまま受け取ればヨーコってなんて身勝手なんだろうと多くの人が思うだろう。それはジョンの妻の座に収まって頼みもしないのにしゃしゃり出てきてビートルズをぶっ壊した東洋人のbitchというステレオタイプの悪妻みたいなかつてのイメージ。いまだにそう思われてるフシはありそうだけど。
 以前 Bed Peace ('69)を見たとき、ジョンの今世の人々が抱いているイメージであったりアティテュードって、敗戦国の財閥お嬢でありながら がっつり外国で渡り合ってきた異邦人ヨーコの受け売り、といっては言いすぎかもしれないけど少なくともヨーコなしではありえなかったろうと思ったのもあり、個人的にはヨーコに対するそれまでのワケワカラン前衛アーティスト、というかライブに関しちゃ悪いけど絶叫おばさんというイメージが一変したものだった。そのせいかジョン亡き後にヨーコがまとめた「ミルク&ハニー」だって改めて聴くといいアルバムだな、と初めて思えたのだけど、ここにきてヨーコbitch説が再燃するのかなあと懸念(苦笑)。
でも、実際ここで語られる彼女のしたことって本当なら「ひどいなあ」としか言えないんだけども。

 もちろん多くの人々の証言があるとはいえメイの記憶の中の話だがら、細かい真実はわからないといえばわからないのかもしれない。でも、正直、その期間にジョンが作り出した「心の壁、愛の橋(Walls and Bridges)」や「ロックン・ロール(Rock'n' Roll)」のアルバムを聴けば答えは明白というか、この期間のジョンって本当に人生や音楽を作ることを楽しんでいたのだろうと思う。私生活はどんなにハチャメチャだったかもしれないけれど、こんなにも充実した曲作りに取り組めてたのってビートルズ前期以来ではなかろうか。それになんといっても、寂しい目をしていたジュリアンとの関係が修復され、父子の絆を取り戻せて楽しい思い出を作れたというのは、やっぱりメイの存在抜きではなしえなかっただろうとジュリアンの語りから素直に思える。だから彼女の言い分を頭ごなしに否定することなど誰もできないんじゃなかろうか。確かなものはあるんだろうなと感じた。
 その後ジョンの身に起きたことを思えば、どちらがどう、とか、もし…は誰しも考えずにはいられないとは思うけれど、残されたファンにしてみればメイとの日々もその前後のヨーコとの日々も、ジョンには大事な日々だったとするしかないのだろう。

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原題:The Lost Weekend: A Love Story 
監督:イヴ・ブランドスタイン、リチャード・カウフマン、スチュアート・サミュエルズ
(ドキュメンタリー)

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