2/22/2025

太陽がいっぱい

 ラストシーンが記憶に残っていたので昔テレビで見た気はする。リメイクの「リプリー」も見ているはずだが、マット・デイモンの鮮やかな黄色い海パンぐらいしか記憶にない。そんなわけでふと思い立って鑑賞。ドロン追悼上映のリバイバルにも行ってなかったし。

 思うに、最後にあんな悩殺イチコロ誘惑を仕掛けてもトム・リプリーはフィリップの恋人・マルジュに惚れているわけではない。かといってフィリップに?というと、今や少数派なのかもしれないけど個人的には「うーん…」と思う。というのも、たぶん彼が望んだのはフィリップの立場や言動、やることなすことすべてを、ひたすら手にしたくてたまらなかったのではなかろうか。丸っとフィリップになりかわりたかったというか。だからトムが彼を模倣して鏡に向かい酔いしれる現場を押さえたフィリップは、単に見下すというより薄気味悪さというか嫌悪感を覚えるのだろうし。マルジュが危機感を覚えるヨットキャビンのシーンや「地獄の果てまでついていってやる」というセリフなど、節々にロマンスめいたものをあまり感じなかった自分は相当鈍いのかもしれないけど、どちらかと言えばトムは自己愛だったり欲そのものに溺れたのではと思ってみていた。一見計画的な犯行にも見えるけれど、その後のトムの行動ってかなり場当たり的で小者っぽい。いくらサインを真似たりパスポートの偽造がうまくいってもあまり知的に練られたものではないように感じる。彼が散策する魚のマルシェで大写しになる断ち切られた魚の頭部やエイの裏側ってそのへんの象徴のような気もするのだけど。
 そんな脆さや愚かさのようなものと不思議なクールさを併せ持った魔性のキャラが、ブルーにもすみれ色にも見えるような瞳を持つアラン・ドロンにドンピシャにはまったということだろう。パトリシア・ハイスミスの原作にはリメイクのほうが忠実だというけれど、本作に関してはドロン抜きでは成立しない作品。永遠のはまり役だ。

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原題:Plein Soleil  監督:ルネ・クレマン  1960年製作
出演:アラン・ドロン、マリー・ラフォレ、モーリス・ロネ

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