5/27/2024

枯れ葉

 カウリスマキの映画の登場人物は皆どこか不器用。そしてあまりに世渡りが下手すぎて痛い目を見るなど、負けっぱなしの人生が切り取られている。でもそれが悲嘆に暮れたり明日をもしれない不安に終わったりするのではなく、まるでThat's Lifeとでも言わんばかりにどん底にいるはずの登場人物はドライにさっぱり受け入れて、そういたるまでの本当であれば実際悲惨で不幸なはずの出来事が、真っ暗なだけでなくかすかでほのかな明かりが遠くに見えるような終わり方をする。そこがカウリスマキの描き方のうまさというか、ひと筆描きみたいなさらりとした妙に毎度感心する。

 今回は冒頭からもろに現実味がある。素朴な北欧シンプルデザインの部屋でラジオから流れるのはロシアのウクライナ侵攻を伝えるニュース。実際ロシアと国境を接するフィンランドはどこよりも人ごとでは済まないと報じられていたけれど、そこで起きる出来事はこれまでとそんなには変わりない。スーパーの仕事を突然クビになったヒロインのアンサと工場で住み込みで働きながら隠れて飲む酒がやめられないホラッパがバーで偶然出会いひと目で恋に落ちる。厳しい生活の中で二人が微妙にすれ違う姿にハラハラしながらも、最後寄り添う姿になんだか新しいカウリスマキを見た気がして、違った温かさに包まれた。とても好きだった作品。

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原題:Kuolleet Iehdet (Fallen Leaves) 監督:アキ・カウリスマキ 2023年製作
出演:アルマ・ポウスティ、ユッシ・バタネン、ヤンネ・フーティアイネン
2024.1.30鑑賞 @Stranger

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