エリザベート1878

 　オーストリア、ハプスブルク家・最後の皇帝ヨーゼフ２世の皇妃として知られるエリザベートの生涯にインスパイアされた完全な伝記モノとはちょっと趣の変わった作品。
　原題はフランス語の「Corsage」ずばり「コルセット」。エリザベートといえば有名な肖像画もあるようになにより美貌の人であり、自身の美しさを保つためストイックなまでの美容法を実践していた。体操したり食事制限したりというのは本作でも登場するけれど、なかでも有名なのはウエストを極端なまでに細く保つため、コルセットをギチギチに身に着けていたこと。ウエスト40センチともいうその姿は、あまりに絞りすぎて残っている写真には昆虫っぽくみえるものもある。蝶よ花よともてはやされていても、奔放な生活というより流浪の生活を好んだエリザベートは特に皇太子のルドルフが「うたかたの恋」で知られるように恋人と心中してしまった後には、自ら好んだハンガリーや欧州各国を頻繁に行き来し、旅の途中で暗殺されてしまうという悲劇の生涯を送ったことでも知られている。

　本作でいう「コルセット」はがんじがらめの宮廷生活の象徴であり、なおかつ年齢に抗うようにこだわり執着し続ける美の象徴という、エリザベートの感情に任せた奔放さと対比させた、よいタイトルだと思う。
　史実と監督のイマジネーションがうまく統合していて興味深く鑑賞。

原題：Corsage　監督：マリー・クロイツァー　2022年製作
出演：ヴィッキー・クリープス、フロリアン・タイヒトマイスター、カタリーナ・ローレンツ
＠Bunkamura渋谷宮下　2023.9.26　鑑賞