2/03/2023

SHE SAID/シー・セッド その名を暴け


 元ミラマックスのプロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの長年に渡る女優や女性スタッフへのセクハラ事件はまだ記憶に新しいけれど、告発の発端となったニューヨーク・タイムズ紙の記者たちによるまさに戦いの日々を当事者二人の回顧録に基づいて描いた物語。

 ワインスタインを業界から葬り去る口火を切ったのは二人の女性記者だけど、彼女たちは厳しい報道の世界で決して仕事ばかりのがむしゃらしゃかりきで突っ走ったわけではない。幼い子供を抱えて、ときには育児ウツだったり仕事と家庭の両立など皆と同じような悩みを抱えながらも職務をこなした。それはもちろん家族や職場の理解ありきだとは思うけれど「女性が輝く社会」って…というか「女性」にこだわる必要もなく、働く人がみなそれぞれに打ち込める環境ってこういうことだよなと思いながらみていた。

 それにもう一つ印象的だったのは「報道」のありかた。丁寧に取材を進めていくジョディとミーガンは感情的に流されることがあったとしてもそれを表に見せない。たとえ被害者が受けた仕打ちに憤ったり同情心を感じたり、告発される側が様々な手を使って恫喝してこようが、一定の距離を保ってアクションしているからこそより信頼が置けるように感じる。
 ワインスタインのしてきたことは誰がどうみてもゲスな悪事であるけれど(本人は長年の映画業界の慣習だから許されると思ってたみたいな言い訳をしてたようだが 怒)、たとえ多くの証言が得られても証言者が実名報道を拒み、なおかつ告発される側からの言い分も取れないうちは記事は世に出せないというタイムズの姿勢は、自分たちの進めてきた取材の確かさへの確信みたいなものがあるからこそ打ち出せる公平さにも思う。日本の官邸会見に出るような記者さんたちも某社砲もそういうことってきちんとやっているものなのだろうか。

 主役の二人を含め役者さんは素晴らしかったけれど、ともすれば過去のトラウマを思い出しかねなかったろうにそれでも登場したアシュリー・ジャッドには頭が下がった。
先に出た原作も同じタイトルだけど「その名を暴け」はどうかと思う。

原題:She Said 監督:マリア・シュラーダー 2022年製作
出演:ゾーイ・カザン、キャリー・マリガン、パトリシア・クラークソン
@109シネマズ二子玉川 2023.01.31鑑賞


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