8/22/2022

時代革命


 昨年の東京フィルメックスでサプライズ上映された際、非常に話題になった2019年香港民主化運動デモをデモ隊内側から映し出したドキュメンタリー。
 英国から中国への返還時における英中の共同宣言では返還後50年間は保証されていたはずの香港の自治がほぼ撤回、2014年普通選挙候補者たちの親中ぐあいに反発した学生を中心に大規模なデモが行われた。その雨傘運動のときには死者がでるまでの暴力沙汰はほとんどみられなかったように思うのだけれど(自分が知らないだけかもしれないが)、市民の抵抗を中国政府はほぼ丸無視。多方面で次第に締め付けが強くなっていくなか、民主化活動に携わった人々も北京の拘置所に送られかねない「逃亡犯条例改正案」が2019年の議会に提出されたことをきっかけに再び大規模なデモ活動が行われるようになる。
 原則デモ参加者は無抵抗非暴力で行われた前回に対して、警官隊は催涙弾にゴム弾、放水を
雨あられと降り注ぎデモ隊は火炎瓶でやり返す。その様子はまるで60年代後半の日本の学生運動の攻防を彷彿とさせるのだけれど、黒社会の人間まで担ぎ出して若者らを襲撃させる警察隊の攻撃がえげつない。議会や地下鉄車両、大学や繁華街の街角に至るまでまるで内戦のような壮絶な光景が広がる。これ、中央の政府以外に一体誰が得をすることになるのか。「こんな状態は30年香港に住んでて最悪だ」と捨て台詞を残し立ち去る白人男性、「これじゃ仕事に行けないよ」と訴えるおじちゃんやおばちゃん、「若者に手を出さないでわしの言うことを聞きなさい」と懸命に語りかけるおじいさんすら突き飛ばす警官。つらい。

 自由のために命をかけて闘うとデモ隊の若者たちは言うし、それは並大抵の決意では言えないのは十分わかるけれど、こんな手段では市民同士で必要のない対立も生まれるのではないのか。覆面姿でインタビューに答えるのはデモの前線に立った若者たちのほか識者や報道に携わった人々だけど、警棒でデモ参加者をメッタ打ちにする警官隊にも割って入ってやめさせようとする隊員もいるように向こうの側にもまともな心ある市民はいると信じたい。変わるべきは本来市民を守るの側であるのは明白だ。
香港の明日は、そして……

原題:時代革命 英題:Revolution of Our Time 2021年製作
監督:キゥイ・チョウ(ドキュメンタリー)

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