6/25/2022

東京2020オリンピック SIDE A/SIDE B

 オリンピックの公式記録映像はクライテリオンから出たリストア版のボックスも持っているし、結構な数を観ているほうだと思う。一般的に有名なのはレニ・リーフェンシュタールや市川崑、公式記録じゃないけどルルーシュの『白い恋人たち』になるのだろうけれど、ここ近年の公式記録、たぶん大会自体商売っけがどーんと大きくなった夏季LA(1984年)あたりからなんとなくスポーツ特番風の作りになっていて、それまでの競技の模様や成績を多めに網羅して黙々と映し出す「記録」的な作りより、いくつかの競技の個人戦手にスポットを当てて大会前後からその選手がどんな風に本番に臨んだかみたいなナレーションが入るスポーツドキュメンタリー番組っぽいものが増えてきたように思う。それはそれでいいのかもしれないけれど。NHKの総集編の方がよくできてるんじゃ?って気もする。

 今回のSIDE Aもそういった作りの箇所もあるけれど、事前の懸念よりはどちらかといえば好感を抱いた。コロナ禍という特別な外的要因で大会が1年順延、無観客試合となったこと自体異例な環境下ではあったけれど、LGBTであったり様々なアスリートが個々の主張や権利を直に表すことが認められるようになったことは画期的だったと思うし、それらは記録として残されるべきだったろうから。光を当てた競技も個人的にはいいチョイスだったと思う。ナレーションでいちいち説明入れないだけ普通に記録映画らしいと思ったし。(ABに共通する自然や子どもの映像は良くも悪くも監督のハンコのようなものだろうと思うのでたぶん欠かせないのだろうからそれ以上は触れない)

 SIDE Bに関してはこういう異例ずくしの大会だったからとはいえ公式記録として残すのは…。コロナのドタバタは百歩譲ってしょうがないとしてそれ以外の部分の完全内側崩壊劇というのは、日本国内向けの記録だよね。バッハ会長のよいしょ具合も反対派が愚かに描かれているというのもどういう狙いで入れたのかわからない(見方によってはどっちにとってもとてもイヂワル)。もちろん2020年大会の真っ黒レガシーとして忘れないよう残しておくことは必要だけれど、結局組織委員から外れた人々がああだこうだ言う場面は、たとえ萬斎さんがどんなにまっとうなこと話していてそこにものすごく共感するものはあっても、正直オフィシャルな記録映画としてのボックスには肩を並べて入っていてほしくない。もし入れるならいかにも公開に間に合わせるためにやっつけで作りました的な疑問の残る編集ではなく、ちゃんとやり直した方がいいだろう。

監督:河瀬直美 2022年製作
SIDE A @109シネマズ二子玉川
SIDE B @TOHOシネマズ日比谷

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ちなみに私の好きな公式記録映画は上記の著名3本を除くと
・マラソン(1992年夏季バルセロナ大会 監督:カルロス・サウラ)
・ホワイトロック(1976年冬季インスブルック大会)
・ローマ・オリンピック1960(1960年夏季ローマ大会)
かな。そのほか忘れられない場面が収められた作品は多々あるけど


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