11/13/2021

最後の決闘裁判

  14世紀、実際に行われた「決闘裁判」に基づく作品。同裁判について調べまとめたエリック・ジェイガーの書籍が原作。

 騎士カルージュの妻マルグリットは夫が遠い地に戦に出ていた間、彼の旧友の従騎士ル・グリに強姦されたと帰郷した夫に告白する。激怒して訴えたカルージュだが無罪を主張するル・グリとその仲良しこよしで彼とは折り合いが悪い領主により法廷による裁判では決着がつかず、ついにカルージュが国王に申し入れた決闘による裁判で審判を決めることになる、というのが大筋。

 カルージュ、ル・グリ、そしてマルグリットそれぞれの視点で順番に語られる事実は当人からしたらどれも真実だろうけれど事実は1つしかない。市井には身分問わず隠れて色事やらそういうことは多々あっただろうけれど、当時の価値観からしたら姦通は大罪も大罪だったわけで、それを公に申し出て争うということは今の我々が想像なんかできないほど、天地がひっくりかえるぐらいに大変なことだったろう。夫の付属品として物同然に扱われていた女性たちの立場を簡単に現代に置き換えて考えるのは難しくとも、人として踏みにじられる気持ちに昔も今もないだろう。いくら本当の真相は誰にもわからないにしたってそれぐらいの想像は容易い。

 本作だけ見ている分にはどうみたってル・グリは問題外だし自分のお家のことしか考えてないカルージュにもイライラ。姑の説教にもむかついたけど、ゲンナリしたのは国王の前でマルグリットが尋問を受けるシーン。それそのものというより、この21世紀になってもどこぞで繰り返されている風景に心底反吐が出る。これらすべて中世も今もあまり変わらない気がする。

 決闘が終わっても高揚感のない馬上のマルグリット。そしてようやく歩けるようになった息子に優しいまなざしを向ける姿をどうとるか。いくつかの憶測もできるだろうけれど、彼女がすべてをかけて大切なものを手にしたことだけはこれもまた否定できない事実だろう。

原作の「最後の決闘裁判(ハヤカワ文庫刊)」も読んでみたい。

日本でもなんかなかったけ、と考えたら

そーだ『武士の一分』?と思い当たった。

似てるのは妻絡みで果たし合いを挑むってとこだけかもしれないが。

原題:The Last Duel 監督:リドリー・スコット 2021
出演:マット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック
2021/11/13 @TOHOシネマズ日比谷

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