緑の党の党員で環境大臣の座を狙うも家庭では妻や息子との不和を抱える長男、図書館司書で利用者の女生徒をのぞき見ては欲情するという困った性癖を持つ次男、かつて結婚し家庭を持ち子供をもうけたもののNYで運命の恋をして今や女性としてクラブダンサーをしている三男という3兄弟それぞれの幸せさがし。
2006年のドイツ映画祭でベルリン映画祭の主演男優賞(M・ブライプトロイ)受賞『素粒子』を監督したオスカー・レーラーの前作。
3兄弟の性格形成にはなんとなく世捨て人風の父親の影響があるようにも思われるのだけれどこの父親がいったいどういう親父なのかは詳細はよく分からず。兄弟それぞれがトラブルを抱えてなかなかうまくいかない日常の生活に葛藤してるのはわかるんですが、親父との仲もふくめどこまでが本人の思い過ごしでどこまでが本当の苦労なのか分からないところも。それでもってその解決の方法はちょっと唐突。というか短絡的な気も。
兄弟の描写は軽ーいものからブラック、というより毒を含みすぎたユーモアっぽいものもあるし、作品の全体には軽快なポップスも使われたりしているのだけれど 正直あんまり後味は良くなかったですねぇ。というかそれぞれのハッピーエンドとおぼしき行き着き先があまりにはじけていないので…。まだ長男は何とかなるかもしれないけれど、次男は逃亡したってきっと捕まるだろうし、またアグネスの人生に至っては性転換までして一生をかけた恋があの恋人との再会で報われたということかもしれないけれど、ちょっと腑に落ちない部分も。タイトルの割には彼女の存在が何となく添え物のような気がしないでもなかったな、というかそれぞれ強引にまとめすぎた気がしないでもありませんでした。
去年のドイツ映画祭公式サイトの解説によれば
<愛と裏切りと救済>をテーマに問題作を次々と発表してきた監督のオスカー・レーラーは、故R・W・ファスビンダーの真の後継者とも評される実力派
とのこと。レーラー監督のこれまでのフィルモグラフィーってこんな感じの作品が多いらしいんですけれど、(…そういえば今年のチラシに掲載されている『素粒子』のあらすじ読むと限りなくこの作品に似てる気がします)ファスビンダーってこんな感じなのでしょうか? 妙なおかしみみたいなものはなかなかいい感じだったりしましたが、ちょっと思わせぶりかなぁというところも。だけど本国でも結構評価高いんですよね、この作品って。うーん。
あとやっぱエンディングに「ハッピー・トゥゲザー」の選曲というのは、『ブエノスアイレス』というあまりに鮮烈な先例があるだけにちょっと二番煎じ臭い。そんなパクリ臭い音楽の使い方してる作品には抵抗を感じてしまうところが自分にはあるので(例えば『タクシー』の最初のやつなんかもあの音楽といえばとりあえず『パルプ・フィクション』があるわけなのによくもまー恥ずかしげもなく安直に使いまわしできるもんだと否定的だったので)、乗り切れなかったのもあるかもしれません。
原題:Agnes und seine Brueder 監督:オスカー・レーラー 2004年製作
出演:マルティン・ヴァイス、モーリッツ・ブライプトロイ、ヘルベルト・クノップ
@ドイツ映画祭2005(2005.6.4~2005.6.12)上映作品
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