2/12/2005

フォッグ・オブ・ウォー

副題は『マクナマラ元米国防長官の告白』。

 ケネディ、ジョンソン二人の大統領の在任中、切れ者・豪腕国防長官として仕えたロバート・マクナマラが自らの体験で得た11の教訓に基づく告白。ウィルソン大統領が「戦争を止めるための戦争」と呼んだ第一次世界大戦中に生まれ、ハーバード大を卒業、統計学の専門家として教鞭を振るっていた時、第二次大戦に3年間従軍し東京大空襲の作戦に参加、終戦後フォード社長に就任後まもなくケネディ内閣の国防長官に抜擢されキューバ危機を回避、その後開戦したベトナム戦争中の大統領暗殺後にはあとを引き継いだジョンソンに解任されるまで職務を遂行し、その後世界銀行の総裁となったマクナマラさん。彼にについては意固地になってベトナム戦争を押し進めたらしい人、くらいのことしかわたしは知らなかったけれど、語られる事柄はスクリーンよりもNスペなどでじっくりみたい現代アメリカ史でもありました。回顧録など読んでみたいです。

 統計学的にみて数字的に一番敵に対してダメージを与えられる攻撃としてB29の低空飛行による攻撃を報告したところ上官に採用され、一晩で民間人10万人もの犠牲者をだした東京大空襲や日本がそれ以上戦える国威もないと分かっていながら落とされた広島・長崎への原爆。そんな割に合わない、イコール以上の攻撃をしてしまったことへの後悔から「戦争には目的と手段の釣り合いが必要」と教訓にあげながらも、ベトナム戦争で大量の枯葉剤を散布したことに関しては「有害だと分かっていれば蒔かなかった」というさっきの教訓はどこへ?という詭弁っぽい発言がでてきたり。どこか?と思うところもあるのですけれど、結局この人は大統領であったり作戦の司令官であったり自分に仕事を任せてくれた仕えるべき人にはものすごく忠実で、与えられた職務を全うしたにすぎないと思っているのではないのでしょうか。だからここまで客観的に物事を振り返られるのかしらと思いました。大統領のブレーンとして進言はする、データを収集解析して数字が表すところのその状況に応じた最良・最善の提案をするところまでは彼の仕事だけれど決定権を持つのは大統領であり司令官。彼の中で個人的な道徳からどこまでの攻撃が許されるのかというラインは見えていてもそれを実行するのは彼自身ではないわけで。ケネディが生きていればベトナム戦争は泥沼化しなかったろうと語るマクナマラさんですが、逆に言えばもしかしてキューバ危機だって起きたのがケネディの任期中でなかったら今頃核戦争で世界は終わっていたのかも。こわい。

 第二次大戦の時の上官でキューバ危機のときには攻撃を支持したルメイ将軍に対して「仕掛けられた戦争なんだからこれ以上悪くならないように、いつ攻撃されるか分からない相手は徹底的根こそぎ叩くべきと考えていたんだろう」と推測する件はなんだかそのまま現政権に当てはまるような気がするんですが、パウエル元国務長官なんかもそのうちなんかしら書き物をする日が来るのかも知れません。しかし大統領選前の生物科学兵器工場云々やら戦争開戦責任の追及やらその辺はもういいんでしょうかね?

原題:THE FOG OF WAR: ELEVEN LESSONS FROM THE LIFE OF ROBERT S. MCNAMARA
監督:エロール・モリス 2003年製作
出演:ロバート・マクナマラ(ドキュメンタリー)@三軒茶屋中央


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