4/30/2024

マエストロ その音楽と愛と


 客演指揮者の急病によって代理で立ったステージが評判をよび、成功への階段を歩み始めた若きレナード・バーンスタインと、その頃に出会って以来 生涯彼を傍で支え続けた妻フェリシア・モンテアレグレがともに歩んだ日々を描いた物語。

 バーンスタインの私生活のことはほとんど知らなかったので冒頭から半分驚きもしつつ見入ってしまった濃厚なドラマ。バーンスタインという人はいい意味、破天荒で男女分け隔てない人たらしだったんだろうなとは思うけど、なによりフェリシアが出来すぎなまでにすごい。女優としての活動に加え、本編にはあまり描かれていなかったようにも思うけれど様々な社会活動に積極的にかかわりながら(たぶんそのへんはアメリカでは誰もが知っている前提なのだろうか?)、母親として3人の子を育て、家庭を守り、また世界的著名な指揮者・作曲者の夫を見つめ続けたのだから。どんなことがあろうと彼女に手を振り切ることをさせなかったバーンスタインの才能や魅力も確かに間違いなくあったのだろうけれど、確固たる自信に基づく忍耐、包容力というか…。彼女の人生をもっと知りたいと思った。

 監督も手掛けたブラッドリー・クーパーは熱演も熱演で、指揮まで学んで取り組んだと言うだけあってマーラーの2曲の演奏シーンは震えるほどに感動。ドラマパートでもいかにも「人たらし」的で魅力的。フェリシアを演じたキャリー・マリガンもとてもうまかった。

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原題:Maestro 監督:ブラッドリー・クーパー 2023年製作
出演:キャリー・マリガン、ブラッドリー・クーパー、マット・ボマー、マヤ・ホーク
Netflicks鑑賞

4/21/2024

ビー・ジーズ 栄光の軌跡


 ビー・ジースことバリー、ロビン、モーリスの3兄弟のキャリアと活動をたどるドキュメンタリー。

 ビー・ジースというと「マサチューセッツ」に映画『小さな恋のメロディ』の「メロディ・フェアー」の美しい旋律や『サタデー・ナイト・フィーバー』のサントラが一番に思い出されるけれど、本作ではその長いキャリアの中での何度か起きた音楽性の方向転換の節目やサウンド作りに関するメンバーや関係者の証言がとても興味深かった。また著名な後進アーティストたちから語られる彼らのサウンドや兄弟ユニットだからこそのメリットや難しさなどなども。なんといっても「彼らはビートルズにも匹敵する偉大なサウンドメーカー」「兄弟ならではの共鳴があるんだ」と大絶賛を送ってるのがノエル・ギャラガーだというのがなんとも。だったら君もリアムと仲直りすればいいのに(苦笑)。でも口では絶対ありえないとか言っていても、再び一緒に活動再開する日もそう遠くはないのかも…?と脱線するぐらいあのシーンには吹いた。
 あとクラプトンとビー・ジーズの親しい交流もちょっと意外だった。そう言えば両者とも赤ベコ(違)がトレードマークのRSOレーベルだったなあとは思ったけど、60年代から親交が続いていたとは知らなかった。「461オーシャン・ブールバード」のジャケットになってるあのスタジオをその後ビー・ジーズが使ってたとは!
 しかし映画の世界的な超メガヒットと同時にビー・ジーズも爆発的なブームになったけれど反動のバッシングの渦がそこまでひどかったことも知らなかった。でも彼らが表だった活動を控えていた時期に、優れたソングライティングの楽曲提供で活路を見出していったことはいい方向に働いたのじゃないだろうか。彼らのオリジナルはもちろん、あとを追ってデビューした末弟アンディの曲にしても、バーブラ・ストライサンドやディオンヌ・ワーウィックetc.etc.にしてもステキなナンバーが目白押しなことを思えば、ノエルが言うように「ビートルズに匹敵するソングライター」というのも納得だ。
 ただ、やはりそういった華々しい成功や素晴らしい才能と引き換えとは言いたくないけれど、アンディに続きモーリス、ロビンとあまりにも早く世を去ってしまったのは本当に惜しくて悲しいことだ。最後、バリーが「成功なんていらないから弟たちに会いたい」と話すシーンは観ていてとても胸が痛む。ちなみに映画の英語原題は彼らが初めて全米ナンバー1を記録した1971年のシングル「傷心の日々」のタイトル。なんか皮肉にも聞こえるけれど、バリーには長生きしてほしい。
観終わってからビー・ジーズの多彩なアルバムを聴き続けていることはいうまでもない。

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原題:The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart
監督:フランク・マーシャル 2020年製作
出演:ビー・ジーズ、エリック・クラプトン、ノエル・ギャラガー、ジャスティン・ティンバーレイク、クリス・マーティン etc.

4/10/2024

アイアンクロー

 “鉄の爪”の異名をもった伝説的レスラー、フリッツ・フォン・エリックの息子たちとして1980年代にプロレス界で活躍したケビン、デビッド、ケリー、そしてマイケルの兄弟と父親フリッツらフォン・エリック一家の絆と悲劇を描いた物語。

 彼ら兄弟が日本のリングに登場した80年代は自分もリアルタイムでときどきテレビや雑誌でプロレスを追っていたので、フォン・エリック家がデビッドの死後もケリーの事故など不幸に見舞われたことはなんとなく知っていたけれど、自分が知っていた3兄弟以外にも弟たちがいて(マイケルは知らなかったのと、映画にはなぜか描かれていないけれど彼の下にもう一人クリスという息子がいる)その彼らもプロレスの道に進んだものの自死を選んでいたことは知らなかった。ケリーが亡くなっていたのもずいぶん後で知ってとてもショックだった。
 監督はインタビューでも家父長制・アメリカの強い父親像テーマを内包していると語っている。父親のフリッツが息子たちをチャンピオンにしたいという夢というか野心を持たなければ悲劇は回避できたのだろうか? 後付の時代目線でフリッツに対するいろいろな批判もわかるけれど正直よくわからない。
 映画化にあたって監督がケビンに話を持っていったとき、「一家を襲った悲劇の物語ではなく家族の物語にしてほしい」とリクエストされたそうだけれど、それが劇中に何度も出てくる「自分たちには家族が一番大事」というセリフだったり、冥府で兄弟たちが再会するシーンやケビンと彼の子どもたちのやり取りのシーンに反映されているのだろう。その2つの場面はとても優しく心に残る。

 フォン・エリック一家に実際に起きた出来事はあまりにも不幸すぎたけれど、ケビンが今も妻と一緒に元気でいて、子どもたちや孫たちなど大勢の家族たちに囲まれて幸せに暮らしているということを知ることができたのはなによりの救いだった。

 ザック・エフロンはじめ兄弟役の役者さんたちの体の作り込み方が驚くほどすごい。プロだなーと感嘆。ちょこちょこ登場する兄弟と対戦するレスラーたち、ブロディやレイスにフレアとかもビミョーに似ていて懐かしかった。そういえば監督がイギリスの方だというのもちょっと意外だった。イギリスと言えばダイナマイトキッドだよね

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原題:The Iron Claw 監督:ショーン・ダーキン 2023年製作
出演:ザック・エフロン、ハリス・ディキンソン、ジェレミー・アレン・ホワイト、スタンリー・シモンズ
@109シネマズ二子玉川 2024.4.8 鑑賞

 

4/08/2024

オッペンハイマー

 ひとりの原子物理学者として、研究、実験、実践したオッペンハイマーの複雑な生涯を描いた伝記映画。
 原爆の描かれ方/使われ方に対し 史実使われた側としては特別な感情、あまりに短絡的じゃないかと憤りの気持ちを抱くのは当然だけど、物語として描かれているのはそれそのものではなく作り出した彼自身の「生涯」。なので現状で本作が咎められるような要素はない。彼らが作りだしたものから生じた結果についての想いは、本編にも描かれていたと思う。

 後半はオッペンハイマーというより暴かれるストローズの物語といっても良さそう。私怨でそこまでするかいなって気もするけど、でもあの時代だったらおかしくないのかも。危うい時代の空気もまた核兵器同様今の時代にも通じるものがある。すべて地続き、と思うと背筋も寒い。

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原題:Oppenheimer 監督:クリストファー・ノーラン 2023年製作
出演:キリアン・マーフィ、ロバート・ダウニー・Jr、エミリー・ブラント、ケネス・ブラナー、ラミ・マレック、ケイシー・アフレック、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット

@109シネマズプレミアム新宿 4/7鑑賞

4/05/2024

クイーン:ロック・モントリオール1981


 1981年のクイーン、モントリオール公演のライブを収めた映像。元になっている公式市販ソフト「伝説の証」の解説によれば35mmからのレストア映像にオリジナル音声をリミックスしたということだけど、それをIMAXフォーマットで上映したもの、という認識でよいのだろうか。ひょっとしてこの前のライブでロジャーがヤング・ワン!といって映し出していたのはこれのドラムソロからもってきた映像なのかしら??
 いずれにしてもクイーンの最盛期最高のパフォーマンスと名高いライブ映像が、こうして来日公演の興奮も冷めやらぬうちに期間限定でも公開されたのはタイムリーというか、便乗というかドジョウ?的なものも感じなくはないけれど、フレディの歌声に臨場感に溢れた環境で触れたいファンの想いを叶えるような上映ではあったと思う。映像はこれまたすごくきれいだし(だけど観客だけが映るシーンはあんまり気張って直されていない気も…)、音も当然すごくいいのでIMAXで観る価値はありでした。ちなみに自分が最初にして最後になった生クイーンのライブはこのツアーの日本公演だったので、遠い記憶が蘇るようでもありました。「ライブ・キラーズ」に準じていたセットリストの運びやら「ボヘミアン・ラプソディ」のオペラパートでメンバーがいなくなったステージでライティングだけがペカペカしてた様子とか。

 大昔にはそれこそ今でもしょっちゅう登場するクイーン初来日時のお茶会風景も含めたフィルムコンサートっていうのがあったんですけども、もう雲泥の差というか比べ物にならんほどいい劇場で、画も音も良いライブが楽しめるなんていい時代になったなーのひと言ですね。

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監督:ソール・スイマー 1981年製作
出演:クイーン
@109シネマズ二子玉川 2024.02.26鑑賞


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