9/17/2024

夜の外側 イタリアを震撼させた55日間


 1978年にローマでおきたアルド・モーロ誘拐殺人事件をモーロ自身と妻、党で親しくつきあっていた内務大臣、ローマ法王、そして誘拐を引き起こした赤い旅団の女性闘士と多面的な視点から6話構成で描き出した作品。

 ベロッキオのモーロ事件を描いた作品というとマヤ・サンサ演じる旅団の女性闘士の目線から描かれた、開放されたモーロの散歩というファンタジックな演出も印象的だった「夜よ、こんにちは」があったけれど、今回ものっけからそれに近い。幽閉から開放されたモーロの病室をアンドレオッティ、ザッカニーニ、そしてコッシーガという政権の主要人物が訪ねベッドを覗き込む前で、モーロは涙を浮かべ「これでもう党のあらゆる役職より身を引くのだ」とモノローグで語られる。以降時計の針を戻し、内閣の発足前から誘拐、各々がモーロ救出へ向けて尽力は尽くすものの、何かしらの忖度や突き抜けられない壁が横たわり、事を進められずうやむやにそまされていく様子が描かれる。そのやり取りを通じ、最終章でモーロが幽閉先に目隠しをして連れてこられた神父に感情を吐露するシーンを目撃した後、繰り返される冒頭のセリフはずいぶん意味合いが違って聞こえてくる。イタリア社会にとっては壮大な徒労に終わってしまったと言ってもいい、悔やんでも悔やみきれない悔恨なのだろうなと。

 そんな自国の現代史の闇を力強く描ききれる映画作家、演じる役者たちの存在はとても眩しく見える。

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原題:Esterno Notte 監督:マルコ・ベロッキオ 2022年製作
出演:ファブリッツィオ・ジフーニ、ファウスト・ルッソ・アレージ、マルゲリータ・ブイ、トニ・セルヴィッロ、ダニエラ・マラ
2023.5.7 イタリア映画祭2023(映画祭タイトル「夜のロケーション」)
2024.8.28 @Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下 再見


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