街の劇場で上演されていたシェイクスピアの『リチャード3世』の芝居を見て、それまでの冷酷無慈悲の暴君というリチャード3世のイメージに疑問を感じた歴史学者でもない会社勤めの主婦フィリッパが、様々な資料を洗い出し、ついにはプロジェクトを立ち上げ、定説だった川に打ち捨てられたというリチャードの遺骨を探し当てるまでの実話を元にした物語。
自身も会社で先導した仕事が正しく評価されないなど壁につき当たっていたフィリッパが、シェイクスピアによって「暴君」のレッテル付をされたリチャードに感情移入しつつも汚名を雪いでいくべく孤軍奮闘するさまは、それこそ観ている側も応援したくなる。発掘プロジェクトの予算をプレゼンで勝ち取り、協力大学の横暴で投げやりな態度にも負けずに実際遺骨を見つけ出すも、結局「世紀の大発見」と世界的にも話題になったその事実は、大学当局の成功になってしまったのが悔しい。でも彼女の情熱と行動力をちゃんとみている人はいたのだから世の中も捨てたもんじゃないなと思う。といいつつ、大学側の教授として描かれたご当人は「自分は常にフィリッパを尊重していたのに、映画の中では女性蔑視で発見の手柄を独り占めするような陰険な人物として描かれている」とプロデューサーも務めたS・クーガンと製作会社を名誉毀損で訴えているそうな。事実はともあれ、映画はたしかにそんなふうには見えたよね。
遺骨の発見に貢献したとしてフィリッパ・ラングリーさんは2012年にMBAを授与され、その後はリチャード3世によって殺害されたとされる二人の幼い王子たちの死の解明に乗り出したり、ヘンリー1世の墓所を探し出すなど精力的に活躍しているとのこと。
原題:The Lost King 監督:スティーブン・フリアーズ 2022年製作
出演:サリー・ホーキンス、スティーブ・クーガン、ハリー・ロイド
2024.1.25 鑑賞 @Stranger
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