チャンス

　長年世話になっていた屋敷の主人が亡くなり、住むところを失ってスーツケース１つで街をさまよっていた庭師のチャンスは、ひょんなことから富豪夫妻の家に滞在することになる。頭の回転がちょっとスローで言葉少ないチャンスの醸し出す雰囲気に人とは違った思慮深さと知性を感じ、彼の発する言葉にそれまでの取り巻きとは違った隠喩と深みと読んだ富豪夫妻はチャンスを一廉の者と思い込み、心から信頼できる人間として大統領をはじめとする友人たちに紹介していくのだが、突然現れ夫妻の心を掴んだチャンスの素性を調べようと政府機関が画策しても彼が何者でどこから来たのかは誰もわからない。やがて病で療養していた富豪の夫が亡くなりその遺言によってチャンスは自分の知らないところで富豪の妻の再婚相手、そして副大統領候補へとまつりあげられる。

　無垢で無欲なもののわらしべ長者物語といったところか。彼を疑うものはいないわけではないけれど、基本的にでてくる人はみんな心根の良い人々で性善説に基づいて行動しているような一つの寓話。そしてチャンスは湖の上を歩いてみせる。

原題：Being There　監督：ハル・アシュビー　1979年製作
出演：ピーター・セラーズ、シャーリー・マクレーン、メルヴィン・ダグラス、ジャック・ウォーデン