1/26/2023

モリコーネ 映画が恋した音楽家


 2020年惜しまれつつ世を去ったマエストロ、エンニオ・モリコーネ。数々の映画音楽を手掛けてきたモリコーネの経歴とこれまでの仕事を本人と共に働いたり影響を受けた人々が語るドキュメンタリー。
 父親がトランペット奏者だったことから幼い頃より音楽に親しんでいたモリコーネは、最初病気になった父の代わりにトラッペッターとして歩みだし、作曲の能力に気づいた音楽教師の勧めで音楽院の作曲科に進む。そこで生涯の師に出会い優秀な評価を受けて卒業した彼は生活のために携わるようになったイタリアン・ポップスのアレンジャーとして認められ、やがては小学校の同級生だったセルジオ・レオーネとの再会から本格的に映画音楽の作曲を手掛けるようになっていく。駆け出しのころのポップス作品から多くのイタリア人監督に認められた映画音楽の数々はどれも魅力的であるのに、いわゆる正当なクラシック音楽の教養を学んできた彼自身は引け目と感じていたという。加えて尊敬する師を含め周りの同窓生もそういう目で見ていて、初めてモリコーネを認めたのは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』だったと語られるのはいくらアカデミック畑の人たちとはいえちょっと驚いた。モリコーネがジョン・ケージのような実験音楽というか現代音楽の作曲も手掛けていたことも初めて知った。

 モリコーネの映画音楽で個人的に一番好きなのはたぶん『ミッション』なのだけど、たしか作品が公開された年あたりに『ラウンド・ミッドナイト』も公開されてたなと思い出す(ラウンド〜のほうがちょっと早かったかも。ミッションはGW頃だった)。同年のオスカーの作曲賞ではハービー・ハンコックがメインテーマを手掛けたとはいえほとんどスタンダードなジャズナンバーに彩られた『ラウンド〜』が受賞し、ほぼ全編オリジナル主義を貫くモリコーネが憤る場面は今から思えばもっともなんだけど、それにしても後年『ヘイトフル・エイト』での受賞はあまりに遅すぎだったろう。
 約160分に渡る本編はとても充実していて見ごたえがたっぷり。改めて気付かされる多彩な曲のメロディーをモリコーネがほぼすべて記憶しているのがすごい。どの映画も見返したり、イタリア時代の作品はポップスも映画もひとつずつ観て聴きたくなる。
 監督のトルナトーレはじめインタビューやエピソードとして登場する監督、音楽家の面々がとても豪華で皆敬意を持って語っているのもすごいし、そこにメタリカのジェイムズやクラッシュのポール・シムノン、フェイス・ノー・モアのマイク・パットンまで登場したのはこれまた驚きだった。

原題:Ennio 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 2021年制作
出演:エンニオ・モリコーネ(ドキュメンタリー)
@TOHOシネマズシャンテ 2023.1.17鑑賞

にほんブログ村 映画ブログへ


0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

popular posts