4/30/2004

愛という名の旅

  1910年代のトスカーナを舞台に女流作家シビラ・アレラーモと天才的詩人ディーノ・カンパーナの実話に基づく悲恋の物語。

 女流作家シビラ・アレラーモは画家の友人から若き詩人ディーノ・カンパーナの手紙を受け取る。そこに綴られていたのは「バッテ・ボッテ」という一編の詩。その詩に深い才能を感じ取ったシビラは彼に興味を持ち返信、しばらくの文通後ほどなく対面した2人は瞬く間に恋に落ちる。それまで奔放な恋の生活を送ってきたシビラは「今度こそ本物の恋を見つけた」と喜びはしゃぐがまわりの友人たちはいつものことととりあわない。海辺の家に一緒に暮らし幸せなひとときを送るシビラとディーノだったが、シビラが著した自伝「ひとりの女」を読み進むにあたって、ディーノは次第に彼女に対する激しい独占欲と過去の男たちへの嫉妬を募らせノイローゼに陥っていく。そしてある嵐の夜の事件をきっかけに2人の愛は悲劇的な結末へと突き進んでいく。

 塩精製業を営なむ裕福な家に生まれ育ち奔放な恋の遍歴を辿ってきた美しい女流作家と狂気を持ち合わせた天才詩人の運命の恋。よく言えばかなり正統派のラブストーリーかも知れませんけれど、お話的に特に目新しいところはないというか…なんとなく先が読めてしまうメロドラマかも。いいところのお嬢さんであまりにも美しく、進歩的な考えをしていたシビラがまわりから別に自分の望むところではないところで淫乱な女と勝手に思われて、そういう枠にはめられたくないから強がったり苦悩したりとその辺もよくありそうな話ではあります。

 この作品で一昨年のベネチア国際映画祭主演男優賞を獲得したステファノ・アッコルシは天才とキチ紙一重の微妙さが(…というかどっちかといえばかなり激しいんですけど)これまたありがちな役柄とはいえとにかく大熱演。これまでイタリア映画祭で上映されてきた「サンタ・マラドーナ」や「無邪気な天使たち」の現代的な青年像とはイメージがらりと違います。そのまさに取り憑かれてるみたいなブチ切れ大暴れシーンにはひたすらヒョエ~と驚くばかり。でも海辺で黒いニャンコと戯れたり(首にかつがれてるニャンコがちゃんと反応していて非常にカワイイ)、最後のクリスマスの場面でシビラに抱かれつつドギマギしながら「バッテ・ボッテ」の詩を詠むくだりはみてるこっちもキャ~と頬を染めてしまうかわいらしさ。なのでその後シビラが「バラの詩を思い出せ~」としつこく迫るシーンでは彼女が教育ママっぽいというか、「黙れ、●売」ならぬ「黙れ、オバはん」と思ってしまうのでした。

 舞台は第1次大戦頃のイタリアですが、自然やらセット衣装に至るまでの美術装飾もとても美しいです。それと忘れてはいけないんですが劇中及びエンドクレジットで使用されているバラの詩はじめ、詩がとにかく素晴らしい。また役者では少女時代のシビラを演じたカティ・ルイーズ・サンダースが印象的でした。今後も注目したいものです。

原題:Un viaggio chiamato amore 監督:ミケーレ・プラチド
出演:ラウラ・モランテ、ステファノ・アッコルシ 2002年製作
@イタリア映画祭2004(2004.4.29~2004.5.4)にて


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