1/24/2025

陪審員2番


 臨月近い身重の妻と子どもの誕生を心待ちにしているケンプのもとに陪審員の召喚状が届く。妻の健康状態もあり一度は断ろうとするもののコミュニティ紙の記者としての義務感からか結局「陪審員2番」として裁判に参加することになった彼だが、恋人を雨の夜道で殺害し現場に打ち捨てた罪に問われている被告人を法廷で目にしたときケンプは愕然とする。なぜなら裁こうとするこの事件に彼自身心当たりがあったからだった。

 本来なら関わるはずのなかった事件に偶然裁く立場で関わることになり、故意ではなかったとはいえ本来自分が座っていたかもしれない被告人席に、当日の状況的にも普段の素行から考えれば誰もが「クロ」とレッテルを貼る元恋人の姿を目にしたケンプ。真実を話せば元アルコール依存症で保護観察下に置かれていた自身の身は絶対的に不利になり、幸せしかないはずだった家庭も奪われることになる。状況的な証拠が提出されるたび、当然のごとく自分しか知り得ない事実にケンプは最後までどうすべきか逡巡し、気持ちの傾いた方向と逆の行動をとったりもする。集められた陪審員たちにしても果たして本当に公平に物事を判断しているかといえば、いかにも自己中や打算的であったり、偏見からくるものだったり、制裁的なものだったり純粋な事実を見極めて裁きを下すのは決して用意なことではない模様が描かれる。

 そんな陪審員ほぼ一致有罪の結論を覆していく物語といえばやっぱり「12人の怒れる男」だろうけれど、そこは一筋縄ではいかないイーストウッド作品。正義そのものは今も昔も大きな違いはないはずだけど、改めて多面的なものなのだろうかと考えさせられる。あとに続くであろういくつかの展開を想像してみるけれど、ケンプが判決後に検事と対峙して語ってしまった時点で勝負はあった気はする。
 決してフィルムではないテレビドラマ風の画作りに最初はかなり面食らったけれど、登場人物たちの揺れ動く心を描いた物語自体には見入ってしまった。

にほんブログ村 映画ブログへ

原題:Juror #2  監督:クリント・イーストウッド 2024年製作
出演:ニコラス・ホルト、トニ・コレット、J・K・シモンズ、クリス・メッシーナ、キーファー・サザーランド
2025.1.21  @ U-NEXT鑑賞

0 件のコメント:

コメントを投稿

(※営利目的、表題に無関係な主義主張・勧誘のコメントは削除します。ご理解ください)

popular posts